ドゥームズデイ・ブック(下) (ハヤカワ文庫 SF ウ 12-5)
ドゥームズデイ・ブック(下) (ハヤカワ文庫 SF ウ 12-5) / 感想・レビュー
MICK KICHI
終末の日に訪れる裁きは果たして...。中世史学を学ぶ、若く美しい女学生ギブリンの念願が叶った14世紀へのタイムトラベル。希望に満ちた道程に予期せぬ暗雲が垂れ込める。災厄に次ぐ災厄、現代へ帰る術さえ奪われた彼女の苦難の日々。物語世界に入り込めば込むほど胸が締め付けられる。こんな事があってい良いのか...。一方、彼女の帰還を待つ現代の大学チームも未曽有のトラブルに巻き込まれ..ハラハラドキドキの展開。シリアスな過去世界と調子外れの悲喜劇を繰り返す現代のコントラストが見事に調和するせつなくて美しい大傑作。
2019/07/23
はたっぴ
数々の賞を受賞しているだけあり、読後は心が満たされている。コマ切れに読み進めたが、気持ちが削がれることなく存分に物語に没頭できて幸せだった。この充足感は登場人物のキャラクターによるものだろう。悲しみを内に秘めて他者のために行動するキヴリン、ダンワージー、コリン。命を賭して職務を遂行するメアリ。彼女達の崇高な自己犠牲の精神にすっかり打ちのめされてしまった。キヴリンがタイムスリップした14世紀。古代人の悲劇的な結末は昨年読んだ『ペスト』の寂寥感にも重なる。様々に感情を刺激され、お気に入りのシリーズになった。
2018/03/09
昼夜
名前だけは知っていた黒死病の恐ろしさやギブリンの戸惑いが本当に見て感じたものに思えてくる。14世紀と21世紀の時間的な距離や死に瀕した人々の声を聞いても自分だけで逃げ出さなかったギブリンとどこまでも実直に神に使えたローシュ神父の姿に感動しました。でも、14世紀だけでは辛すぎて読んでいられませんでしたが21世紀のコリンやフィンチ、ウィリアムの存在で大分気分が救われました。こんな大変な経験をした後に21世紀に帰ってきたギブリンのこれからが心配です。
2014/07/26
Small World
コニー・ウィリスと言えばユーモアな作風のイメージだったのですが、この本はシリアスそのものです。これから読む人は表紙の印象に騙されず、心して読んでください。ダンワージー教授が感じたように、たしかに人は無力ですし、キヴリンの経験は凄絶でしたが、コリンの存在やラストシーンに救われた感じでした。(Wクラウン作品)
2018/08/06
翔亀
【コロナ11-2】(上巻の感想から続く)なぜ本書に夢中になってしまったのか。SFの要素は唯一タイムトラベルだけだ。それも時間のパラドックスとか時空の理論が展開されるわけでもない。単純に中世史の学生"一人"を調査のために過去に送り出すだけ。しかし誤って1348年、そう黒死病の英国上陸の年に送られてしまう。一方、送り出した大学では新型ウィルスが猛威を振い黒死病と同様の死者を出し、学生を救出できない。数百年という人類の進歩があっても、依然疫病には太刀打ちできないのだ。過去と現在どちらが安全なのか、コロナの↓
2020/05/10
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