銀色の恋人 (ハヤカワ文庫 SF リ 1-2)
銀色の恋人 (ハヤカワ文庫 SF リ 1-2) / 感想・レビュー
みつき
銀色の肌と赤い髪を持った人間そっくりのロボットシルヴァーと、母親の庇護から抜け出せなかった少女ジェーンの愛の物語。最初プラトニックな恋愛を描いているのかと思っていたので、タニス・リーが愛と性を切り離すことなく描いた手腕には脱帽しました。シルヴァーが『相手を喜ばせる事をインプットされた』ただの娯楽のためだけの機械から、ジェーンの一途な愛により、徐々に相手を真に労わり、心から愛するようになるその描写は、ため息がでるほど美しく、後半は涙なしには読めませんでした。
2013/04/30
ユメ
赤い髪に緑の瞳、そして銀色に輝く皮膚。美しいあなたと、私は恋に落ちた。そう、私はロボットに恋をしてしまったのよ……。恋を知らなかった少女ジェーンが狂おしいまでに相手を想う気持ち、あなたに会えない今日は明日は何百年もの彼方という気持ちに目覚めてゆく様が、色彩の巧みな描写や奏でられる音楽などを活かして抒情的に綴られる。そして、ロボットであるシルヴァーが次第に魂を宿し、ジェーンに惹かれてゆくのが感動的だ。この美しい悲恋の物語は、忘れられないものとなった。この作品は、ただのSFでも、ただのロマンスでもない。
2017/07/17
UC
池澤春菜さんのエッセイに出て来ていたため読んでみました。ロボットに魂は、愛は存在するのかというメインテーマとともに母娘の話でもあった気がする。ロボットの魂の有無だとかは好物なテーマなのですが、今回は別の方向に興味をひかれました。ジェーンの箱入りっぷりやそこからの変化の仕方、ラストの心情など、シルヴァーよりもジェーンに注目しながら読みました。うーん、ハーレクインってこんな感じなんですかね。
2016/11/30
作楽
素敵でした。 少女の成長物語ですが、友人のクローブィスの優しさも良かった。何よりも、シルブァーの素敵さには、涙が出ます。久しぶりに、ピュアで切ない話が読めました。
2017/11/15
歩月るな
『未来のイヴ』からここまで来た。本当に天才的な手腕で描かれるこれぞラブストーリー。悪い連中も含めて人間たちがちゃんと魅力的であるがゆえに、若者たちが自由に振舞う時代の空気感は『時計じかけのオレンジ』のような危うさもあるのだが、人間心理という根底の反応が至極当然なほど理路整然としている。手記の形式で描かれるが故、章ごとに分断された時間の流れが見事な演出になっており、存在するかしないか解らない仮想の読者を見事に想定した表現に心臓が早鐘を打つ。表現の容赦の無さはさすがのタニス・リー本来のジャンルではない代表作。
2019/04/26
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