変種第二号 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-24)
変種第二号 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-24) / 感想・レビュー
Shintaro
ディックの混沌とした頭の中を垣間見たようで面白かった。現実と虚構が反転、あるいは混沌とし、ディストピア的オチがある。本作は9編の短編集であるが、核戦争、宇宙戦争あるいは永久戦争というテーマがあり、緩やかなつながりがある。「ジョンの世界」や「変種第二号」には後の「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」や作者が違うけどターミネーターの原型的思考が感じられる。当然若いうちに読んでおくべき本だった。この年になってディックが面白いとはヤバイが、未読のヲヤジはこっそり読んだほうが良い。知的な若者と会話したいのなら。
2017/05/06
絹恵
"人間はどんなものにでも安全装置をつけてきた"と言って、"同士討ちを避けるための安全装置"を搭載するものは、自らは自らを裁けないことで結果的に危険が生まれます。しかし自ら作ったものを自ら壊すものを作るということは、ある意味では自制と責任を果たしていると言えるし、またある意味では壊し合いの水掛け論だとも言えます。神は自分に似せて人を作ったのなら、やはり人間が作る機械は人間に似て、末恐ろしいです。(PSYCHO-PASS/泉宮寺の生きがい『人間狩り』/改題『変種第二号』)
2016/07/26
たー
秀作ぞろいの短編集。ディックらしく(?)だいたいオチは暗いけど。
2014/08/17
もち
「それが変種第三号。いちばん効果的なやつだ」◆機械仕掛けの殺戮兵器により、決着したかに見えた戦争。和平交渉に出向いた将校は、思わぬ新兵器と遭遇する。生存を賭け、仲間と行動を共にするが――。疑念と、銃と、爆炎を向け合い、戦いは続く。(表題作)■本好きなら、オチを読める短編もあるかもしれない。現在の作品群にまで原型を見いだせるほど、面白さの根源をがっしり掴んでいるからだ。70年前から時を超えて届く、色褪せぬ驚き、戦慄、カタルシス。
2020/01/28
楽
14年、主に戦争を扱った短篇集だがやや長めの作品もあり。ほぼ1950年代の作品で冷戦の影響を強く受け、人間対人間、人間対機械の戦争、戦争後の荒廃した世界が描かれる。平和な家庭が核戦争の世界に放り込まれる、最初の「たそがれの朝食」から唸らされる。中盤以降の「火星潜入」「歴戦の勇士」「奉仕するもの」「ジョンの世界」と秀作ぞろい。表題作の「変種第二号」はのちに「スクリーマーズ」として映画化されたが、誰が人間なのか、疑念が疑念を呼ぶ展開で、アイデンティティを問うテーマの多いディックの作品の中でも出色。
2019/11/17
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