小さな黒い箱 (ディック短篇傑作選)
小さな黒い箱 (ディック短篇傑作選) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
全く、古びない政治社会、宗教についての問いかけが為された短編集。『輪廻の車』は笑える教化活動の顛末ですが、帝国主義にとって代わったグローバル社会化への痛烈な皮肉じゃないだろうかと思ってしまいます。『ラウタヴァーラ事件』は確かにそんなのが教主と言われても怖すぎる・・・。『傍観者』は嫌悪感が募る一方で怖いですが、『ジェイムズ・P・クロウ』は困難ながらも機械からの支配を脱した人間が未来を切り開いていくという点では希望が持てるかな。もっともクロウ自体が独裁者化するというオチでなければですが・・・・。
2014/11/06
キジネコ
作家は自虐的な滑稽譚「水蜘蛛計画」に寄せて20世紀の予知能力黄金時代を描いてみせます。主人公はSF作家、彼らが想像力を働かせ書き上げた物語が作り話の態を借りた未来予測だと未来の科学者に気付かせる話を最後から二つ目の物語として読者に提供します。1950年代に書かれた終わらない11話。半世紀を経て私達が目の当りにする「予測された未来である今」が滑稽譚の外衣を脱ぎつつあること知らされます。例えばホーキング博士の警告したAiがもたらす未来の不吉… 出口のない閉ざされた時間、空間の焦燥。人智から遠ざかる神と信仰。
2017/08/20
おにく
巷の最新SF小説を横目にディックの短編を買い揃えてます。彼の小説は、現実が音を立てて崩れるような“現実崩壊モノ”が特徴ですが、特に“巻き込まれ型”の主人公が非常に多く「なんで俺がこんな目に?」と言いながら逃走するような話がお気に入りです。今回ツボだったのが“待機員”エイリアンの艦隊が迫る中、大統領に指名された主人公が「俺は待機員なのに…」とグチをこぼしながら側近と、ああでもないこうでもない「イチゴシェイクは半分残しておけ!」とダレた雰囲気が楽しい。ディックの短編は、たまに食べるジャンクフード的な印象です。
2016/12/12
ニミッツクラス
14年の税抜1020円の初版。“ディック短篇傑作選(全6巻)”の5巻目で11編を収録。今回のお目当ては初書籍化の「ラウタヴァーラ事件」。雑誌オムニに掲載されたのが84年だから30年ぶりの披露となる。なかなか面白い内容で、スタトレのように異星人との連邦を組めても、現場での細かな摺り合わせは難しいものだと考えさせられる。「輪廻の車」も新潮の「悪夢機械」以来27年ぶりとなる。電気羊が引き合いに出される表題作は、ここで終わるの!と言う幕切れが歯痒い結末。確かに映像化されたブレ・ランには全く描写が無い。★★★★★☆
2018/08/07
けいちゃっぷ
今巻は「政治/未来社会/宗教」がテーマらしい。 未来社会はともかく、政治や宗教はどちらかというと守備範囲外だからなあ。 それを差し引いても、ひとつひとつは「それなり」だけど続けて読むと疲れる。 そうは言ってもディックの短編は面白いし、この中では「傍観者」のラストにあ然としたものだ。 512ページ
2015/05/18
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