銀河の壺なおし〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)
銀河の壺なおし〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF) / 感想・レビュー
ケイ
監視管理下の味気ない未来社会が舞台でも、『ブレードランナー』のような冷たさがなく、それどころか喜劇性の冒険劇とも言える。「ええっ!」となったあとに、「そっちなのか!」となり、再びびっくりして…の繰り返し。ロマンスさえも笑いが入る。言葉が古いが、ずっこけポイントが次々にあらわれ、気が付くと読み終えていた。最後の1行がまたいい。今で言えば「ヤバい」になるのかな。味気ない未来社会において、主人公に陶器の欠片を修理するという非常にアナログ的仕事をさせるところに、作者が何を大切に思っていたかが見えるように思う。
2018/01/15
星落秋風五丈原
映画『トータル・リコール』のイメージがあったので主人公はヒーロータイプかと思っていたら日がな一日言葉遊びで時間をつぶす真逆のキャラ。ではそんな彼が思わぬ出来事で今まで隠されていた能力を発揮するのでは?(どうしてもヒーローにしたいらしい→自分)と更に期待すると、これもどうやら眉唾。オファー相手のグリマングが、事前情報によると「無一文で貧乏」らしいし、ジョ―によこしてくるメッセージ(手回し式の蓄音機)は、都合の悪い質問がくると途端に意味不明のわめき声になる。どう考えてもヒーローものになりそうな予感はない。
2017/11/16
催涙雨
ウーブとかキップルみたいな聞き慣れた造語が登場する。逆にそれがなく作者名も伏せられていたらディックの作品だとは思わないかもしれない。メインプロットはそれくらい単純(?)な内容で、壺なおしとか聖堂のような突飛なモチーフを受け入れることができればかなり取っつきやすいほうだと思う。良くいえば読みやすく悪くいえばすべて希釈したような薄くて大味な作品。本筋と離れたところでは思いついたアイデアを手当たり次第ぶち込んだみたいに〈ゲーム〉だとかファウストだとか、不思議なモチーフが暴れ回っている。この直後に書かれた「死の迷
2018/11/12
かわうそ
意図された混沌なのか投げやりなのか、もしかして思いついたネタを逐次投入していっただけじゃないのかなどと邪推しながらもサクサク読んで最後の一行にニヤリとしたものの、最後まで際立つ変てこさを面白がれずじまい。もう少しディックを読んでから読むべきだったのかもしれません。
2018/08/20
おにく
“幻の長編”など、本の帯に書かれた悶々の地雷感が半端ないですね。失業中の壺直し職人ファーンライトの元に、半神グリマングがその腕を見込んでシリウス第5惑星からスカウトに来るB級テイスト満点の珍品です。グリマングはクトゥルフ神話に出てくる旧神のようでなかなか良い雰囲気ですが、ちょっとコミュ症なのと、予知者“カレンド”の不吉な予知のせいで、みんな何をして良いのか分からない状況が続き、読んでいてやきもきしました。ちょっとやっつけ仕事な感じですが“言葉あそび”などディックらしいノリでファンは楽しめるかと思います。
2017/11/09
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