影に歌えば (ハヤカワ文庫 FT 83)
影に歌えば (ハヤカワ文庫 FT 83) / 感想・レビュー
袖崎いたる
タニス・リーによる『ロミオとジュリエット』のファンタジー作品への翻訳作品。リー作品をそんなに読んだわけではないが、彼女の造形する人物は、自己への引責事項を、自らに負うところを思わずに、他人の所為にするという同情し難さがある印象。それはこの作品にも見られる。原作の「家同士の対立」のモチーフは死せる親友マーキューリオの「はやり病さ」「<家>という名前のね」というセリフにて読者を素晴らしい絶頂へと誘う。結末は、ファンタジーの形式が可能にするリーなりの、ロミオとジュリエットという悲運の恋人たちへの救いになってる。
2015/07/30
madhatter
ずっと読みたかった本なのだが、期待を裏切らず。ファンタジー要素もあるが、むしろ人間描写に惹かれる。リーは『ロミジュリ』に描かれた恋愛そのものよりも、それの波及効果を描きたかったのではないかと感じた。主役二人がそうでない訳ではないのだが、彼等に振り回される脇役の描写の方が生彩がある気がする。マーキューリオやレオパルドについては言うまでもないが、個人的にはマーキューリオとの対話におけるサフィロも良かった。ところで、エレクトラに見られる母性の闇は、リーのテーマとしてはかなり古いのだなと思う。
2011/08/18
ホレイシア
上質な耽美の世界。井辻さんの訳が最高。
2008/01/05
ユキモリ
タニス・リー版ロミオとジュリエット。期待して読んだせいか、書き込みは豊富でも原典とほぼ同じ流れにやや肩透かし。勿論オリジナルエピソードはあるけれど、もっと大胆に換骨奪胎したものが読みたかったなぁ。
2014/04/12
mira
脇役が魅力的すぎて主役が霞んでたかも…。原典ありきですが、より重厚で陰惨で華やかな印象。
2010/10/18
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