北風のうしろの国 (ハヤカワ文庫 FT ハヤカワ名作セレクション)
北風のうしろの国 (ハヤカワ文庫 FT ハヤカワ名作セレクション) / 感想・レビュー
seri
ファンタジーを好きでいて良かった。ただひたすらに思う。150年の時を越えて全く色褪せない輝き、魔力を持った言葉たち。ファンタジーとは心の地平をひろげるもの。作品の持つ精神性を骨組みに、枝葉をのばし、地図を世界を塗り替える。上質なファンタジーの秀逸さについて語る言葉を多くもたないけれど、この精神性こそがマクドナルドの真骨頂。厳しくも優しい北風を信じ、小川のせせらぎの歌に耳を澄ませ、生物達の息吹を感じる。ダイアモンドのひたむきさが、心に響く。萎れた葉だって煌めく心の星になる。生きていくための秘訣を囁く名作。
2014/04/21
ryuetto
子供のころ以来の再読。子供のとき読んだ本は、子供向けの簡略版だったので、今度の本は、完全版だろう。と思う。その分だけ、読みごたえがあって、ずいぶん楽しめた。 大人になって読み返してみると、ダイアモンドがあまりにもいい子で、泣きそうですよ。病気の父親の代わりに御者をやって、生活費を稼いでみたり、お母さんのために赤ちゃんの子守を進んで引き受けたり、隣の家の父親がのんだくれで喧嘩をしていれば、さりげなく入って行って、隣の家の赤ちゃんまで泣き止ませたりしてさ。思わず、怠け者の自分が恥ずかしくなるぐらいのいい子だ。
2019/07/30
shou
北風に抱かれて少年ダイアモンドが旅する夜空の景色が綺麗。ロンドン下層階級の貧しさ、美しい北風が漂わせる死の気配が終始付きまといながらも、少年の純真な優しさに周囲の人々が温もっていく物語。そしてその美しい優しさのための、避けがたい結末。
2015/05/19
白義
タイトルからはわかりにくいけど、北風のうしろの国はあまり直接的には描かれず、むしろ厳しい現実社会の中に息吹く、想像力に溢れた豊かな世界がしっかりとえがかれている。その優しく柔らかな物語とは裏腹に、そよ風の一瞬の冷たさのように死の気配が消えることなく世界観を支配している。ただし、この作品では死は決してネガティブな物としては捉えられていないように思う。トールキン以前のファンタジー史に名を残す先駆者の代表作。風の意志は、風にもわからないので解釈を拒む作品にも思うが、スピノザのような世界に感じた
2012/06/22
ichigomonogatari
小学生の頃読んだ、いつまでも大切な物語。一般的な価値観で語られないお話。北風さんは、「死」のメタファーだけとは言えない不思議な存在だ。子供心には、仲間外れにされているダイアモンドのことが不憫だった。はずれたところで印象に残っているのはおじょうさんのこと。好きで一生懸命する仕事が人間には必要なんだと感じた。もう一つ、赤ちゃんが存在だけで周りを幸せにするということ。
2017/06/16
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