悪夢のかたち (ハヤカワ文庫 JA 21)
悪夢のかたち (ハヤカワ文庫 JA 21) / 感想・レビュー
スターライト
ハヤカワ文庫JA1500番達成記念で復刊された1冊。20代前半に書かれた表題作など9篇を収録。家族、社会と相いれず孤立し暴力的になっていく主人公たち。しかし彼らは孤立しながらも愛情に満ちた関係を結びたいと渇望し、葛藤していく姿を描いているように思える。時に強烈な暴力に訴えもするが、それは彼らの強い気持ちの裏返しとも言える。表題作は様々な夢がないまぜになった異色作で、ここを境に自分とは何者か幸せとは何なのかといった哲学的な問いが表面化している作品が並ぶ。自ら殺人地帯に赴いたアルにならないと誰が断言できよう。
2021/11/07
けいちゃっぷ
作者が20代の頃に書かれた作品集。若いぜ、青いぜ、でも面白いぜ。
檜の棒
本作を一言で例えるならば、「詩小説」だろう。初期の大藪春彦風味を更に煮詰めて表現を先鋭的にした短編が多い。内容は、「人類はクソ」という一言に尽きるので正直飽きる。しかし、文章の瑞々しさは同時代のSF作品でも随一で、作者本人があとがきで「若気の至りで恥ずかしい」と述べているが、才気迸る作品群に内心では「しめしめ」と思ってそう。また、冒頭の作品「レオノーラ」では人種問題が根幹にあり、外国にて黄色人種の顔面をボコボコにする人種間の問題などタイムリーな内容が描かれている。SFは時に預言書の役割を担うのだと思う。
2022/02/20
感想・レビューをもっと見る