七都市物語 (ハヤカワ文庫 JA タ 5-1)
七都市物語 (ハヤカワ文庫 JA タ 5-1) / 感想・レビュー
瀧ながれ
七つの都市の争いを、どちらに肩入れしすぎることなく客観的に描いた作品なので、展開が細切れなこともあって、どこに注目していいのかわからなくて、中盤まで都市とキャラクターの見分けがいまいちついてないまま、勢いで読んでしまいました。最後まで読んだら、「隠居できたヤン・ウェンリー」みたいなギュンター・ノルトが好きです。この著者は結局、SFでも「三国志」になっちゃうのね。宇宙に出られない設定はおもしろいけど、もうちょっといろいろ技術進化があってもいい。偉いさんがのきなみアホで足を引っ張るのも、テンプレであるな。
2017/10/12
イプシロン
田中芳樹といえば、もちろん『銀河英雄伝説』である。だけど10巻と聞くと手が伸びないのだが……という人にはうってつけの一冊といえる。政治権力とは腐敗しつづけるものなのだ! しかも実りある民主共和主義の確立は困難極まりないのだ! というこを、三人の軍司令官を中心に描いていく手腕はみごとだ。銀英伝に比べれば語り口に現れる皮肉はなお一層鋭い。政治権力の腐敗や自己中心性しかもたない人格を斬って斬って斬りまくるのがとても爽快だ。しかし昨今の日本の状況を見ていると、笑いながら読める作品ではないのが、なんともいいがたい。
2016/07/30
ぐっちー
懐かしい!「大転倒」によって激しく変化してしまった地球の7つの都市国家が舞台。月に移住した人々によって管理されるはずだった七都市だったが、月が無人となった後も稼働し続けるシステムの縛りで空の航行はできない。田中芳樹の代表作とは異なり銀河ではく、伝説の英雄でもない、良くも悪くも普通の人間達が地べたで争う物語。癖のある人物ばかりだが、憎めない奴らばかり。続編があったら良かったと思ってたけど、今となってはこの結末で良いのだと。
2017/10/29
シタン
大転倒(ビッグ・フォールダウン)によって地軸が転倒した地球は、あらゆる自然災害に苛まれた。最も凶悪だったのは原子力発電所や生化学兵器施設といった人間による災厄であったのであるが。地球上の人類は再編され、地球人類は七つの都市を構成した。月面都市の住人は、オリンポスが人類に火を禁じたように、地球人類に空を飛ぶことを禁じた。この“オリンポス・システム”によって、七都市は地上で、平面的な、しかし複雑な歴史を築き上げてゆくのである……。 小粒ながら田中芳樹による架空歴史小説の魅力がつまった秀作。トマト育てたい。
2019/04/04
鐵太郎
西暦2088年、地球の地軸が変動し、北極の座標はカリフォルニアの西、1000kmあたりになります。どうなるか。地球は未曾有の天変地異に襲われ、豪雨、洪水、地震、暴風、火山噴火、地すべり、山崩れ。3年間に及ぶ災厄の結果、100億人が死に絶え、地球は死の星と化しました。こういう背景の中で、見事に世界を矮小化しわずかな人間が歴史を作ることができる「箱庭世界」を造ってしまったそのアイディアは、なかなかのもの。この世界を舞台に、政治と陰謀と戦争により頭角を現す人々が生まれ、歴史を作ります。お見事な田中ワールド!
2005/03/12
感想・レビューをもっと見る