太陽の汗 (ハヤカワ文庫 JA カ 3-11)
太陽の汗 (ハヤカワ文庫 JA カ 3-11) / 感想・レビュー
OHta
ペルーの遺跡を舞台に、登場人物の現実がボロボロと崩壊していくさまをスリリングに描いた、まさに神林長平そのものといった一冊。神林作品で二人一組が散り散りになると大抵こうなるよね、というお約束展開でしたが、言葉の変容が世界の変容をもたらす世界で、この結末を用意するところが流石の一言。どこまでも落下し続ける悪夢のような展開でありながら、落下ではなく実は浮上だったのかも知れない、とさえ感じさせる構成はかなり異次元的です。まるで騙し絵。一読では物足りない、不可解な深みを持つ幻想SF。
2017/06/07
どんまいシリル
大作を読んだ後は、どんな本にも心が動かされないのが前提で、未読の神林作品にした。私は誰?ここは何処?が根底にある。悪くないが、感動は得られなかった。
2015/04/09
酔花
世界通信社の情報収集機械ウィンカーが破壊されたことをうけ、二人の男がペルーのインカに派遣されたが、軍人と思しき人物に拘束される場面から物語は幕を開ける。自身の知覚する現実は確かなのか、相手の感じている現実と同一のものなのか。神林が一貫して追求しているテーマは本作でも健在。徐々に、だが一顧した時には致命的にずれてしまっている現実に、2人は翻弄されていく。確固たる現実を把握できない状況下での一人称の語りが幻想味を帯びるのは必然。謎は一切解明されないままという小説としては破綻気味だが、神林の力技が炸裂した一作。
2013/09/30
卯月
再読。機能停止した情報収集機械ウィンカの原因究明のため、ペルーのインカ遺跡を訪れた通信社員JHとソール・グレン。インカ人のゲリラ戦か? 自動翻訳機を通して会話し、高性能カメラを通して風景を見る彼らだが、生身で得る情報と電子媒体越しの情報にズレが生じ出す。神林SFとしては比較的ややこしくない、というか、何故そんなズレが生じるかの理屈に重きを置かずに話が進む。状況に翻弄され続けるJHが最後に至った静謐な境地は、これはこれで幸せなのだろう。ピサロによるアタワルパ処刑後のインカの抵抗の歴史は、本書で初めて知った。
2013/02/26
上井部 頼大
語りたいことが多すぎて字数制限ある場じゃ無理。とりあえず言えるのはおそろしいほど端的に「神林作品」してたってこと。十数冊の経験値があってほんと助かった。一見さんお断りにもほどがある。もう少し経験積んだらまた読み返したい作品。
2012/03/31
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