帝王の殻 (ハヤカワ文庫 JA カ 3-16)
帝王の殻 (ハヤカワ文庫 JA カ 3-16) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
3部作の2作目。本書のSFとしての最大のアイディアは、PAB(パーソナル人工脳)にある。その設定を通して、自分とは何か、そして魂とはいったい何なのかが、ここで問われている。物語は親子3代の確執を孕みながら展開し、その限りでは情念的な要素もあるのだが、全体としてはきわめて論理的、知的なSF作品である。ここで語られる問題性は根源的、かつ今日的ではあるが、物語としての妙味や抒情においては、あるいは前作『あなたの魂…』に及ばないかも知れない。そして、これらのすべてを併せ持つものこそが、次作『膚の下』なのである。
2013/03/05
里愛乍
殻とは人間の身体なのかPABなのか。自分の意識や意思を魂と呼ぶならば、その自己表現のための身体か、種族保存のための自己なのか。思えばこうしてネットに自分の意思をかきこむこともつぶやきも確かに自分の言葉、魂の一部ともいえなくもなくPABみたいなものかもしれません。本人いなくなってもネットにそのかきこんだ意思は残るしね。私にSFと哲学は紙一重だと教えてくれた神林さんの、いかにもな内容のお話だったと思います。
2015/08/13
Our Homeisland
この作者の「膚の下」が日本のSF史上の最高傑作と言われるのを知って、「火星三部作」を順番どおりに読もうと思い、「あなたの魂に、、」に続いて、これも読みました。前作同様に緻密によく描かれている傑作だなと思いました。前作とのつながり具合がうかがえる箇所は、非常に少なかったですが、薄くつながっているという連作具合も良いなと感じました。本格的なSFはそれほど多くは読んできていませんが、国内外の傑作はこれからも読んでいきたいと思います。次の、「膚の下」楽しみです。アミシャダイが良かったです。
2016/05/03
そふぃあ
『七胴落とし』の時のような荒々しさを感じた。火星3部作の第2弾。最近は将棋のポナンザやシンギュラリティなどのAIに関する話題をよく耳にするし、私もSF好きなので機械知性について考えることが多いのだけど、本作は25年以上前の作品なのに色褪せていなくて驚く。PABと呼ばれる自分の分身との会話によってアイデンティティを保つ行為は、言葉によって魂を同定することであり、神林さんらしいテーマだと思う。加えて印象深かったのは、肉体のないPABには魂は宿らないという主張で、思うところが沢山あるのだけど文字数不足。。
2017/06/11
シタン
あなたの魂に安らぎあれに連なる火星三部作の第二作。パーソナル人工脳がある世界における人間と機械の関係性や意識の問題が検討される。並列して、親子の物語、火星人と地球人の物語、異なる思想を持つ者たちの物語が神林節で語られる。 この間の読書会で喋っていたあれって、パーソナル人工脳のことだったのかもしれない。
2024/03/31
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