猶予の月 上 (ハヤカワ文庫 JA カ 3-20)
猶予の月 上 (ハヤカワ文庫 JA カ 3-20) / 感想・レビュー
かとめくん
特殊な「第三眼」を持つカミス人の姉弟イシスとアシリスは、その世界では許されない恋愛関係にあった。その恋を成就させるために世界の改変を行おうとするが、まったく別の世界改変を行おうとする天才バールの登場で物語はとんでもない方向に進んでいく。ほぼ地球の惑星リンボスで「事象」をコントロールしながらせめぎ合う。時間の存在しなくなった世界は擬動で動き、舞台も登場人物も設定もめまぐるしく変わる。なんて難解で厄介で面白いんだろう。初出が1996年だって。すごいな。
2021/10/21
はら
リンボス人である自分には理論を理解するのに時間がかかったけれど、「まばゆい空へ落ちていく」のパートは理論より感情が勝っていたようで胸が熱くなった。時間のない世界で、このシュミレーションはどこまでいってしまうのか。まさに、想像力を侮るな、だ。
2017/09/30
unknown
姉ちゃんとイチャコラしたいばかりに世界を改変しようとしてみたけど、オッサンの邪魔が入るわ色々抵抗されるわで踏んだり蹴ったりという話…なんだけれども、そこに「実現事象」「可能事象」「時間」という3つのベクトルが絡んでややこしいことになっている。「時間が止まっていて、あらゆる事象が同時に発生している世界」で、互いの世界を改変し合うというパワーゲームが繰り広げられていく様は圧巻。
2011/08/01
さとさとし
この本で、神林長平2020/06時点刊行本を全部、読んだことになる。最後の一冊にふさわしく、言葉・理論が世界を作る系の長編。人工惑星カミスに暮らす詩人アイシス、彼と姉であり理論士イシスは愛し合っていたが、それが認められる世界ではなかった。理論士の能力を使い、二人が愛し合うことのできる世界を構築する。その世界は地球によく似た世界。しかし、その事象を稀代の悪人バールに乗っ取られ、時間が停止し、可能性のみが動く世界へと引きずり込まれてしまう。空間と時間と可能性の3次元の世界での闘いが始まる。
2020/07/09
しまっち。
禁断の愛の物語として始まる。きっかけはイシスとアシリスが人目はばからず愛し合える世界へGO、だったけれど、事象やら時間やら擬動だの、頭で考えてもよく理解できないがなんとなく感覚的にわかるようなリンボス=地球が舞台となってストーリーは進んでいく。イシスの愛は揺らいでいき、バールとの諍いは世界を巻き込む。事象は理解しきれていないが、先へ先へと突き進むしかない展開となって意外に読めてしまう。さっそく下巻へ。
2014/07/27
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