凹村戦争 (ハヤカワ文庫 JA ニ 2-1)
凹村戦争 (ハヤカワ文庫 JA ニ 2-1) / 感想・レビュー
へくとぱすかる
地球侵略が起こっても、どうってことなく過ぎていく、隔絶された村の日常。被害はいよいよひどくなるけれど、だからと言って何かできるわけでもない。そこに登場人物(中学生たち)の受験がからんで、日常系のようなセカイ系のような、何もかも見透かされた冷笑的な時間が過ぎていく。謎の物体の正体は依然として不明。しかしそんなことはこの物語にはどうでもいいのだ。結局等身大の世界に頼って生きるしか、人間にはできないのだろうか。ジュブナイルSFが21世紀に蘇るとしたら、こういうシニカルな形になるのかもしれないと思った。
2014/08/27
kanon
ずっと前から気になっていた西島大介さんの初読み作品はこの作品。デビュー作らしい。でもなによりも驚いたのは、出版されている媒体じゃないですかね。だって、ハヤカワ文庫JAですよ?w思いっきり小説のレーベルじゃないですかw漫画文庫のコーナー見てたらあったから手に取っちゃったんだけどね。うんうん。思いっきりメタ!メタの応酬。いやあ、めちゃくちゃ好きだなあこういうの。なんかシュールな絵柄で、メタ。SF。星雲賞まで獲っちゃうんだからいうことはない!他の作品も読みたい。ディエンビエンフーが最有力候補となっております。
2012/10/18
多田幾多
西島先生のデビュー作にしてすでにもう傑作! 凹村という「世界から孤立した」場所でフツーに生きる主人公たちは、宇宙人をきっかけにかわり始める・・・・。 西島先生だからこそ描ける、新しいSF青春ストーリー!!
2013/05/12
かみしの
がちがちの王道だと思う。何もない世界に突如出現した“物体X”と変わらない日常。何もかもぶっ壊れてしまえ、という破壊の後に訪れるカタルシス。様々なSF小説や映画を下敷きにした本作がこんなに軽く読めるのは、この気の抜けたような絵柄のおかげではないか。デフォルメされたキャラとはっきりした骨格のストーリーとのギャップ。全体に漂う他人事のような雰囲気。そこにどうしようもない閉塞感が生まれ、残酷さが際立つ。先生の独白が一番印象的だった。
2013/06/21
しゅん
西島大介は世界を鋭く豊かに、批評的に観察して作品に還元できる作家であり、処女作からかわいい絵柄と残酷な現実が重なるその個性は際立っている。隔離された村と何も起きない日常という設定は地方/都市の関係のリアリティを巧妙に暴いているし、映画や音楽へのオマージュも効果的。特にブラー『ザ・ユニヴァーサル』の歌詞の引用は原曲にはない分脈を引き出していて感動的だった。最初読んだ時はピンとこなかったけど、今読むとガンガン刺さるものがある。特にレンタル店の店員と女教師、諦念を持て余したふたりの大人に強い共感を覚えた。
2017/03/20
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