希望 (ハヤカワ文庫 JA セ 1-1)
希望 (ハヤカワ文庫 JA セ 1-1) / 感想・レビュー
キキハル
作者の第一短編集。収められた7編はいずれも個人と科学の境界の物語である。科学に裏打ちされた究極の浪漫主義。作者が紡ぐのは、猥雑さを取り除き端正で凪いだ湖面のように静かな話ばかりだ。「光の栞」がとりわけ素晴らしく心を打った。最先端技術と昔気質な職人の手技によって作り上げられた一冊の本。それは世界を語り呼吸する本だ。ロマンチックな「魔法」の恋人たちも、ラストを飾る表題作もそれぞれ趣深い。表紙のカバーデザインも印象的だ。まるで希望の光を表しているかのように。どんな時も「希望が最後に残る」のだと・・・。
2011/08/25
小太郎
読んでるうちに気がつきました。再読だったけど「パラサイト・イヴ」や「ブレインバレー」とは違ったテイストの短編集。どちらかというと後書きにもあるように哲学的な話が多く、好みが分かれるかもしれません。7編の短編にうち気に入ったのは「魔法」と「希望」まるで違う傾向だけど瀬名さんの違った面が如実に出ていると思います。十分再読に耐えうる秀作集。
2021/07/15
まつじん
SFなんですが、詩集のような味わいがあります。モノガタリ好きなワタクシの口にはちょっと合いませんでした。
2012/03/24
F
瀬名秀明氏の第一短篇集。美しい、雰囲気のある文章で綴られた7つの物語。難解だがそれぞれ名作の風格がある作品群だ。いずれ再読するであろう一冊。特に印象に残ったのは表題作『希望』と『光の栞』の二編。エレガントな理論で語られる宇宙像を否定した母と、コミュニケーションの定量化モデルを構築した父の元で育った少女の人生を綴った表題作『希望』。声を持たずに生まれた女性と本職人が特別な本を作る話『光の栞』。それぞれ、なにかとても尊い物に触れた気にさせてくれる物語だった。
2011/07/22
もち
「魔法は知らないままのほうがいい」◆栄光の直後、爆弾で両手を吹き飛ばされた天才マジシャン・筧。彼は義手を操り、超絶技巧と共に復帰してみせた。悩める女性マジシャン、理央は思い返す。学生の頃、筧が自分にだけ見せてくれた魔法をーー(『魔法 』)■学問に裏打ちされた頑丈なSFは勿論、恋愛が優しく絡む小品まで楽しめる短編集。全ての作品に配された、憎い仕掛けや展開が見事。読了までは瞬く間でも、鋭い感性が突き付けてくる思索は、脳裏で尾を引き続ける。
2019/04/30
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