The Indifference Engine (ハヤカワ文庫 JA イ 7-3)
The Indifference Engine (ハヤカワ文庫 JA イ 7-3) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
伊藤 計劃の補遺的な短篇集。長編が有していた壮大な世界観は望めないが、テーマが絞られていて分かりやすい。伊藤 計劃を読んだことがなければ、初読にはむしろ最適かも知れない。もちろん、その先には『虐殺器官』と『ハーモニー』が待っている。さて、この短篇群の中では私は表題作の"The Indifference Engine"に最も魅かれる。解説でも指摘しているが、小説の背景にあるのはルワンダのフツ族とツチ族の血で血を洗う様な抗争である。実際はイギリスによる民族分断といった巧妙かつ悪辣な政策があったのだが⇒
2022/05/15
gonta19
2012/3/11 Amazonより届く。 2020/3/19〜2020/4/5 6年ぶりの伊藤計劃作品。 様々なところに発表した、中短編が収録されている。絶筆となった屍者の帝国も中断箇所まであった。 どの作品も強烈な個性が溢れている。つくづく亡くなったのが惜しい作家さんだ。
2020/04/05
buchipanda3
短篇集。発表時期も書式もまちまちだが、通して読むと著者がずっとこだわっていた主題が透けて見えてくる。それはあの2つの長篇へと繋がる。本作でも著者らしい技術哲学の探求とSFエンタメ性を巧みに融合させた世界観を味わえた。表題作では区別をなくし公平化するエンジンで争いの根を絶つという理念が掲げられるが、現実の現実的な重みで理想に遥か及ばない。むしろ制御の傲慢さは虚無を残す。人間の意識を扱うという観点をあの007ボンドと結び付けた篇も描かれる。主題がもたらすのは悲哀だが、そのメタ的な発想に著者の粋な感性を感じた。
2024/02/15
藤月はな(灯れ松明の火)
表題作はルワンダの虐殺を下敷きに『時計仕掛けのオレンジ』のような処置を施されても消せない意志を描いた作品。確かに戦争の後で豊かな国が「もう止めましょう」と言ってもそれは戦争がなかった国でしか通じない倫理でしかない。今まで信じていたものの喪失が無くなったら生きている意味は無くなるのか?「一方しか通じない倫理を越えて戦争を起こすことで初めて人類は一つになれる」という帰結に起こった感情をどう表現していいか分からない。『From Nothing,with love』は改めて題名を見てみると身震いするものがあります
2014/09/14
nakanaka
小説と漫画から成る短編集。「フォックスの葬送」は「メタルギア」の二次創作というもののようですが、そもそも詳しくない私には難解でした。「From the Nothing, with Love」は短編ながらも内容がとても濃い作品になっています。物語終盤までの流れがスマートで作者の力量を改めて感じさせられます。最後に「屍者の帝国」の冒頭部分のみが収録されていますが、かなり面白そうです。書き終えたかっただろうなぁ。完結までを託された円城さんも大変だったろうなぁ。「屍者の帝国」楽しみです。
2019/05/08
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