My Humanity (ハヤカワ文庫 JA ハ 6-2)
My Humanity (ハヤカワ文庫 JA ハ 6-2) / 感想・レビュー
徒花
見た目よりもかなり本格派のSF短編集。4作が収録されていて、前2作は人間のナノロボットを使って脳内に人工的なニューロンの結びつきを作ることであらゆる経験を即座に再現できるテクノロジーをテーマにしたもの。最後の『父たちの時間』も、公かは全く別だが同じくナノロボットを使っている。かなり理屈っぽく、テクノロジーに関する詳細な設定と解説に紙面が割かれているのが特徴的。ただ、エンターテイメントとしてのストーリー性は若干弱め。ただ、『Hollow Vision』を読む限りそれも著者のさじ加減で、なかなか楽しめた。
2017/01/04
みっちゃん
【結晶銀河】で既読の【allo.toi.toi】はやっぱりすごい。あの結末に心がざわざわしてしまう。他には【父たちの時間】が良かった。放射線遮断の為に造り出したナノロボットの変異によって絶望的な状況に陥っていく近未来の地球を描く事によって、原発社会に警鐘を鳴らしながら、研究に埋没してしまう自分から、揺れ動きながらも、「人としての父性」を自覚していく主人公の姿が印象的だった。読了してから改めて、題名と表紙を見直すと感慨深い。
2014/06/26
☆よいこ
SF(未来テクノロジー系)某公共図書館でYA棚にあったけどマニアックSFだろ、中学生には難しい。近未来SFが4編▽[地には豊穣]月開発、火星移住の時代に宇宙労働者確保のために開発された技術、擬似神経制御言語ITPの開発の話。多民族言語に対応するため、もしくは民族文化の保全のためにITPを調整するアジャスタの開発者はアイデンティティについてどう感じるか[allo,toi,toi]小児性愛犯罪者をITP技術で矯正[Hollow,Vision]宇宙コロニーでの宇宙海賊との捕物劇[父たちの時間]ナノマシンの暴走
2022/09/19
『よ♪』
”今”の延長上にある”未来”を描いた四篇。中でも衝撃的な第二話『allo,toi,toi』。小児性愛者、それも強姦致死罪で収監中の男。その矯正を試みる技術者。SF作品としての技術的主題は、埋め込むチップと疑似神経系で脳を補完する研究。性犯罪者を矯正する過程で『好き嫌い』を仕分けするようにプログラムするが。。。”好き”という言葉の曖昧さ。好きだから○○という反応。本来、脳にとっての”好き嫌い”は、脳にとっての”快・不快”。言葉や文化の発展が、解釈の複雑化や錯誤エラーの原因という警鐘に驚愕。問題作だがお勧め。
2018/06/26
ひさか
SFマガジン2003年7月号:地には豊穣、2010年4月号:allo,toi,toi、2013年4月号:Hollow Visionに掲載の3編に書下ろし:父たちの時間を加えて2014年2月ハヤカワ文庫JAから刊行。テクノロジーで変容する人間性をテーマにした長谷さん初の短編集。2編は、他のアンソロジーで、既読だったのが残念。アイデア、世界観ともに秀逸。人や機械知性の進化と拡大の表現に、尋常ではない、インパクトがあります。
2018/05/24
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