ルーティーン: 篠田節子SF短篇ベスト (ハヤカワ文庫JA)
ルーティーン: 篠田節子SF短篇ベスト (ハヤカワ文庫JA) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
10の短篇を収録。内訳はSFの手法を用いたもの、オカルトっぽい要素のもの、民俗社会をえがいたものと多様性に富む。篠田節子氏は長編では執拗なくらいに細部を組み立てていくことで強固なリアリティを構築していくが、短篇においての世界構築は、思いきりがよく大胆である。これらは篠田節子氏にとっても自信作のようで、いずれも捨てがたい魅力に溢れているが、強いて言えば、シュールな小説作法を駆使しつつ、幻想的で神秘的な味わいを持つ「コヨーテは月に落ちる」がベストか。また、氏が得意とする音楽を扱った「ソリスト」も凄まじい。
2019/03/03
kaizen@名古屋de朝活読書会
SF短編集。書籍初出「沼うつぼ」「まれびとの季節」「人格再編」「ルーティーン」「篠田節子インタビュウ」。既出「短編小説倒錯愛」(寄り道ビア補0留)「子羊」(静かな黄昏の国)「世紀頭の病」(天窓のある家)「コヨーテは月に落ちる」(レクイエム)「緋の襦袢」(死神)「恨み祓い師」(コミュニティ)「ソリスト」(秋の花火)。SFとはいうものの、恐怖小説、幻想小説の要素があるものあり。結果的に篠田節を楽しめる。
2014/11/14
藤月はな(灯れ松明の火)
華暗がりの中に愛おしき死者の姿を見て愛欲地獄に曳づりこまれるような『妖桜記』で篠田作品デビューしてから数年。篠田節子作品を読むのはこれが二作目となりましたが「これは凄いものを読んだ!」としか思えませんでした。迷宮化したマンションの中を彷徨いながら孤高のコヨーテに愛着を抱く公務員を描いた「コヨーテは月に落ちる」、男女の生殖機能成熟の反転をシニカルに描く「世紀末の病」、文化人類学や歴史を学んでいる者は垂涎ものの「まれびとの季節」が好きです。そして恨みの描写がえげつないまでに上手くてついつい、頷いてしまいますw
2014/06/20
絹恵
例えば外国映画を字幕で観るときの集中や、頭のなかで鳴りやまなかった音がたった一言で止まる瞬間が詰まっていました。変わる世界のなかで、変わらないものは自身を突き刺す後悔や呪いのような情念しか残っていないと感じることがあります。だからこそ未来を見るより過去を想うけれど、繰り返される未来と過去の狭間で、極彩色のなかから染まらない白と黒を探すことは諦められない。諦められないことは変わらない。
2014/11/13
ソラ
前の方も書かれてましたが、篠田さんのSFは生々しいというか現実感のあるSFだなぁという印象。不気味な感じがもありホラー的な風味も
2014/02/28
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