官能と少女 (ハヤカワ文庫JA) (ハヤカワ文庫 JA ミ 15-1)
官能と少女 (ハヤカワ文庫JA) (ハヤカワ文庫 JA ミ 15-1) / 感想・レビュー
じいじ
小説の読み方、楽しみ方は十人十色。小林秀雄は「小説の魅力は、小説中の人物になり恋愛し、錯覚する楽しみ…と書いている。私も、主人公のつもりで、共感したり反駁したり錯覚を楽しんでいる。いま一つは、俯瞰してストーリーを楽しむ読み方だ。登場人物に感情移入せず冷静に読めるので自分では取り入れている。さて、俯瞰読みした本作の感想。表題通り性描写含みでエロいです。しかし、筋書きが面白い。宮木さんの作家としての懐の広さ巧さを感じます。秀作の『白蝶花』『花宵道中』と違った味わいです。6短篇遜色なし。個人的には【春眠】が。
2016/05/05
ももっち
男性の描く官能は、スポーツじみた挿入の一つ覚えが多い。でも、淫靡はもっと想像の先にあり、髪の毛一本触れらるだけでも昂まりに反応して溢れてくるもの。ナルシスト、ロリコン、監禁、妄想、SM、いろんな官能のかたちと少女たちの物語。薄い胸に細い手足、華奢な骨盤に陶器のような肌。未成熟の果実の硬い果肉に、歯をたてれば、仄かに甘いけれどまだ青く酸い果汁がほとばしる。その行為の背徳に、その心の深淵に、猥雑な香りが立ち込める。陽の光を浴びた、健全な恋愛ではない。歪な恋心。宮木さんの表現は、筆舌に尽くせぬほど本当に美しい。
2017/07/30
巨峰
深く、あまりにも深いところで混乱をきたしている少女たち。ちょっととんがったかわいい系の表紙の絵や興味深いタイトルにひかれて読んではみたものの、かなり消化できない傷のようなものを感じさせられた気がした。男が読んでエロいと思うようなものではないと思う。むしろグロいと言っていいか。
2016/05/22
りゅう☆
見てる入れ物が違うけど肌を重ねる女たちに孤独を感じ、消え入りそうな男子生徒が気になる養護教諭の恋人教諭の性対象に慄く「春眠」、夫の帰りを待つ健気な少女の妄想が痛々しく、愛されていた恋人がいなくなった寂寥感が漂い、叔父に育てられた少女が常識からの歪みに気付かず叔父を追い求める姿が憐れで。「春眠」のその後の「モンタージュ」では犯罪者となった彼を愛していた被害者少女の現状、思いが苦しい。私が私であることを誰が証明できる?心の葛藤に悩み苦しみながらも生きようとする少女。儚い脆い愛の毒。でもきっと解毒剤はあるはず。
2022/10/27
いたろう
6編の短編集。生々しい書名も、単純に「官能」と割りきれない少女が大人を相手にする性の話は、なまめかしいというより痛々しく、やりきれない。これは、大人の側からはエロス(性の衝動)であっても、少女の側にあっては、タナトス(死への衝動)なのではないか。その他、大人の女性が出てくる話でも、未発達の少年のような女性だったり、嗜好が少女趣味だったり、少年相手だったり、情を交わすのも、男女ではなく、ほとんどが女性同士であるなど、ただの艶話にはなっていない。単純な「官能」を期して手に取ると、大きなしっぺ返しを受ける一冊。
2018/02/06
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