7分間SF (ハヤカワ文庫 JA ク 4-17)
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辺境の惑星で調査隊が出会った食料資源“カツブシ岩”の正体とは? 思わずあっと驚く結末が今度もあなたを待ち受ける!1話7分で読めていつでもどこでも楽しめる、人気のSF作品集。 『7分間SF』(草上仁/早川書房) では、自走式掃除機にロードするというのは?つまずいたりぶつかったりせずに、狭い隙間に潜りこむには、人間の身体より便利だ。ただし、それほど素早く動けるわけではないし、各種設備の切り離しスイッチを押すのも難しい。足が短くなり、マイクロ・センサーでダニの屍骸まで見えるようになっちゃうし──。 悩んでいるうちに、洗濯機がごとごとと回り始めた。もう、これじゃまるでポルターガイストじゃないの。カケルったら、ネットを駆け回る冒険がよっぽど気に入ってしまったらしい。そりゃ、面白いだろう。ただ椅子から落っこちているよりは。 機械なりに賢いマンションのシステムが、電流総和を計算して、自動的にミキサーの動きを止めた。 それでも、大音量のミュージックと、洗濯機と皿洗い機、それに給湯システムのシャワーの音は、階上のシモカワ氏の注意を引くには充分だったらしい。正確なリズムで、床が──つ…
2020/4/30
全文を読む“赤ちゃんの意識”が家電の中にかくれんぼ!? 暴走する家電たち/“キッチン・ローダー”『7分間SF』⑤
辺境の惑星で調査隊が出会った食料資源“カツブシ岩”の正体とは? 思わずあっと驚く結末が今度もあなたを待ち受ける!1話7分で読めていつでもどこでも楽しめる、人気のSF作品集。 『7分間SF』(草上仁/早川書房) わたしは、ゆっくりと、このうえなく静かに、ベッドから抜け出した。案の定、カケルが目を覚まして、ぐずぐず言い始める。起きていてほしいと思った時にはすとんと寝こみ、寝ていてほしい時にはいちはやく目を覚ますこの子の才能が、ときどき憎たらしく思えることもある。わたしったら、どうして、この子の養育権を取ることに固執したりしたのだろう。在宅勤務のネットワーカーである、元夫のほうが引き取っていたら、無理なく養育できているはずなのに。せめて、小学校に行くまでの間だけでも、向こうに任せておけば──。 この世に残念なことは他にもいっぱいあるが、マンションのネットワークにおむつを替えるシステムがないのも、その一つだ。わたしは、カケルをベビーベッドの上で押さえつけ、濡れたオムツを剥ぎ取った。それから、寝室に備え付けてあるストッカーを、電子的につっついて、紙おむつを一個転がり出さ…
2020/4/29
全文を読む意識だけで家電を動かせる便利な近未来…でも朝はやっぱり戦争/“キッチン・ローダー”『7分間SF』④
辺境の惑星で調査隊が出会った食料資源“カツブシ岩”の正体とは? 思わずあっと驚く結末が今度もあなたを待ち受ける!1話7分で読めていつでもどこでも楽しめる、人気のSF作品集。 『7分間SF』(草上仁/早川書房) キッチン・ローダー ただでさえ忙しい朝。息子の世話で家はまさに戦場に……。 朝は、いつも戦争だ。 まず、目覚ましのアラームが、頭の中で鳴り響く。その痛がゆい響きは、頭を垂直に起こすまで止まない。 時計が頭蓋骨の外にあるなら、床に叩きつけてでも止めたい音色だ。しかし、それはできない。時計があるのは頭の中だから、叩きつけたら痛い思いをするのはわたしだ。さらにつけ加えれば、それはただのプログラムで、形のあるものじゃない。 あーあ、まったく。 メルマガの付録の目覚ましフリーソフトなんか、脳味噌にインストールするんじゃなかった。今晩、忘れずにアンインストールしておかなくちゃ。 でも、今は、そうも言っていられない。プログラムの出来がどうあれ、今、七時半なのは事実なんだし、戦闘開始のベルが鳴ったら、主婦はただちに戦闘態勢を取らなければならない。家事も仕事も、そして子供も、待…
2020/4/28
全文を読む強欲な地球人たちを待ち受けていたのは… クロッカス人の本当の狙い/“カツブシ岩”『7分間SF』③
辺境の惑星で調査隊が出会った食料資源“カツブシ岩”の正体とは? 思わずあっと驚く結末が今度もあなたを待ち受ける!1話7分で読めていつでもどこでも楽しめる、人気のSF作品集。 『7分間SF』(草上仁/早川書房) イップは、『発掘現場』から少し離れた砂丘の上から、忙しげに立ち働く地球人たちを眺めた。足場を組み、掘削設備を設置し、角度を計測する。紙を指さしながら試掘をし、ビットを交換し、また試掘をする。それは、イップには、よく理解できない作業だった。 どうしてまた、あんなに急いで働かなくちゃいけないんだろう。カツブシは逃げていったりしないのに。カツブシはいつもそこにあって、仲間を育み、おれたちを養ってくれる。 ちっぽけで安っぽい粘土板に目の色を変えて、でかい岩に攻撃をかける地球人たちの気持ちは、イップにはわからなかった。まあ、少しばかり得意ではある。彼がいなければ、博士は、絶対に粘土板を見つけることができなかったろうし、こんな大騒ぎは始まらなかったはずだからだ。 イップの粘土板については、長老会議も大喜びだった。カツブシ岩の周りにたくさんの人が集まってくるのはいいこ…
2020/4/27
全文を読む現地人・砂漠の民に伝わる“巨獣が呑み込んだ財宝運搬船”の伝説/“カツブシ岩”『7分間SF』②
辺境の惑星で調査隊が出会った食料資源“カツブシ岩”の正体とは? 思わずあっと驚く結末が今度もあなたを待ち受ける!1話7分で読めていつでもどこでも楽しめる、人気のSF作品集。 『7分間SF』(草上仁/早川書房) スターク博士は、粘土板から複写した巨獣ビヒモスの絵を折り畳みテーブルに広げて、目の前のカツブシ岩と見比べた。 絵から、装飾的な三本の角と、とげだらけの尾を取り去り、牙の生えた円形の口を閉じさせ、大雑把な輪郭だけを比べてみる。 見れば見るほど、そっくりだった。 絵では、椰子に似た樹木が植わっている背中は少しくびれていて、巨大な臀部に向けて、なだらかに傾斜している。頭部にあたる膨らみは、それよりも少し小さい。 スターク博士は、手を伸ばして、カツブシ石をくちゃくちゃ噛みながら無表情にカツブシ岩を見上げているイップの肩を叩いた。 「見ろ。あれだ。間違いない」 「そうかね?おれには、他の岩と同じに見えるが」 スターク博士は、そうは思わなかった。こいつは、特別な岩なのだ。 スターク博士の研究は、最初から潤沢な予算に恵まれていたわけではなかった。博士は、単独でクロッカスにや…
2020/4/26
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7分間SF (ハヤカワ文庫 JA ク 4-17) / 感想・レビュー
MICK KICHI
前作が5分間、2分間増量はショートショートから短編ぐらいのイメージ。「カツブシ岩」「スリープ・モード」 「チューリング・テスト」が印象的な作品だった。
2020/04/21
ぜんこう
先に読んだ「5分間SF」よりは2分間(?)長い分、話の流れも内容もつかみやすく読みやすかったです。SFにあまり抵抗が無ければ軽く楽しめるかも。 人間がパソコンみたいに一定時間働いてないとスリープモードに強制的にされてしまう「スリープモード」のドタバタしたのが好み(^^)
2020/07/02
ソラ
5分間SFに続いての短編集。前作より2分伸びた分だけ内容は濃くなったかなという感じ。ただ前作の方がもっとテンポが良くて読みやすくキレがあったかなという気がしないでもない。
2020/04/05
Tadashi_N
7分では終わらないが読みやすく、ストーリーも面白い。
2022/04/03
かとめくん
短編の名手、草上仁の最新短編集。裏表紙の「草上仁の作品」に2作しか表示されないのは短編好きの私としては寂しい限りです。技巧を凝らして落ちを付ける造りは昔ながらです。状況設定に凝りすぎて落ちの見えてしまう話もありましたが、展開の面白さだったり奇妙な緊張感だったり、魅力的な話が並んだかなと思います。お気に入りは、「カツブシ岩」「チューリング・テスト」「壁の向こうの友」そして、一番癒されたのが「パラム氏の多忙な日常」。
2020/05/06
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