走馬灯のセトリは考えておいて (ハヤカワ文庫JA)
走馬灯のセトリは考えておいて (ハヤカワ文庫JA) / 感想・レビュー
こら
地球滅亡後の文京区で暮らす宇宙人のゆるゆるライフ、火星での宗教の伝播を考察する論文等々、そのテーマの引き出しが多彩かつその組み合わせが絶妙で、6編のまさに「奇想」の妙味が味わえます。ポストコロナSF「オンライン福男」は現実のコロナ情勢からメタバースへと広がる壮大さ。信仰が質量を持つ事を証明しようとした学者の伝記「クランツマンの秘仏」。備考が最後の一撃風になってるのが心憎い。そしてベストは、往年のバーチャルアイドルのまさにラストライブを描いた表題作。アイデアの奇想もそうですが、登場人物達の内面描写もお美事!
2023/04/27
アナーキー靴下
『アメリカン・ブッダ』が大変面白かった著者による短編集が去年出ていたことを知り読む。一番好きなのは「オンライン福男」、コロナ禍✕メタバースという現在と地続き感ある内容。論文風の「火星環境下における宗教性原虫の適応と分布」も良かった(わからないところも多々あったが)。でも同じく論文風の「クランツマンの秘仏」は乗れず、こちらは奇譚っぽくしてくれてたら好みだったかも。「絶滅の作法」は緩さが良い。「姫日記」は…長い、3行で、って気持ちに。表題作は上手いけど泣かせポイントがない方が良かった。もちろん泣いたけれど。
2023/04/13
塩崎ツトム
収録作の多くはその他アンソロに収録されているので表題作について。自己を死後AIにする前例だとイーガンの「ゼンデギ」を思い出すけど、あれも学習の過程で個人の実存、つまり心の傷に触れる物語だった。現世に残すのはVtuberとしてのわたしか、それともだれかの父親・母親としての自分か。平野啓一郎の分人ともつながる話なのかもしれない。「わたし!」の意識=魂は、他者とのはざまにあるのかもしれない。小松左京の「虚無回廊」に人工実存というのがあったが、人工知能と人工実存、違いなんてないのかもしれない。
2022/12/13
さっちゃん
SF風味の6話収録の短編集。どんどん過熱していく「オンライン福男」、こんな未来は来てほしくない「絶滅の作法」、クソゲープレイ日記にニヤリとする「姫日記」、死後に分身を遺せるようになり死んだバーチャルアイドルのラストライブを開催する「走馬灯のセトリは考えておいて」が好みで楽しめた。特に表題作が好き。推しが死後もライブや配信をしてくれて、自分が死んでからも推し活ができる。これ全オタクの悲願では。実用化したら世の中混乱しそうだけど、大切な人が死後も側にいてくれるなんてちょっと実現してほしい気もする。
2024/02/28
小太郎
セトリって何だろう?せどりなら知ってるんだけどと表題作の意味が分からずに読みました。6編の短編集、柴田さんなら「アメリカンブッダ」で上手いのは知ってるし楽しみにしてました。この中の「オンライン福男」は既読。どの作品もSFマインドに溢れた秀作揃いSFが読みたい4位も納得の一冊でした。この中では柴田勝家のペンネームの所以がわかる「姫日記」が笑えます。出来は表題作が一番だと思います。あとセトリってセットリストの事なんだと分かりました。★4
2024/03/16
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