よろこびの機械 (ハヤカワ文庫 NV 112)
よろこびの機械 (ハヤカワ文庫 NV 112) / 感想・レビュー
おーすが
タイトルはかなりSFぽいが、ファンタジーのほうがしっくりくる。『火星年代記』の最終章にも似た「休暇」、『華氏451度』と同モチーフを扱う「シカゴ奈落へ」をはじめ、ブラッドベリの魔法感じる贅沢な21篇。「ラザロのように生きるもの」や「死神と処女」などの奇譚には、思わずのせられてしまう。「かくてリアブチンスカは〜」も好き。現実と幻覚のはざまで甘えさせてくれるようなロマンチックさにきゅんとする。内容はダークだけど。
2022/07/04
ニミッツクラス
91年の税込560円の16刷を読んだ。66年の銀背のあと、76年にSFではなくNVで出た。途中で新装し、その後マイナーチェンジしたが年代は共に不明。ブラッドベリはその独特の筆致から、承知で読むにはハズレの少ない作家で、本書も珠玉と呼ばれるにふさわしい21作品が揃っていると思う。「死者の日」と「ホアン…」は祭事の“死者の日”絡みでまるで連作のよう。「刺青の女」は有名な「刺青の男」と内容的には関係ないが、意外なオチが面白い。「シカゴ奈落へ」は「華氏451度」の元ネタかと思えるが、実はこちらが後発。★★★★☆☆
2018/03/22
もなおー
訳との相性が悪かったようで、少し読んでいくのに苦戦した部分もあり、そのせいかブラッドベリの中でも比較的ぼんやりした作品が多かったように思う。全体的に面白いんだけど、中盤の中弛みがちょっと難しいところかな。
2016/10/29
シロビ
短編であるのに、それぞれに映画がつくれそうなほど、光景や人物や音や色が鮮明イメージできる。読み進めるほどその世界観にのめり込んでいく不思議な感覚。噛み合っていなかった歯車が結末に向けて徐々に機能していくような読後感。「よろこびの機械」「ラザロのごとく生きるもの」「世にも稀なる趣向の奇蹟」「オコネル橋の乞食」が特に好き。後書きの「白鯨」気になる…。他の作品も読んでみたくなりました。
2020/06/04
spica015
現代を舞台とした哲学的・観念的な趣の短篇集。ホラー・SFっぽさや詩的情緒感は控えめで、この中では「刺青の女」「死神と処女」のような幻想的な作品が好みだった。「刺青の女」は、自分以外の人たちが狂気に囚われているのを目の当たりすると、自分の方が不確かな存在に思えてくる、そういった危うさが表れている。「少年よ、大茸をつくれ」は既読の作品だったが、段々と不穏な空気が出てくる展開にわくわくする。「この世の幸福のすべて」はユーモアがあって、ブラッドベリの魅力の多用さを再認識した。
2018/04/14
感想・レビューをもっと見る