ファイト・クラブ〔新版〕 (ハヤカワ文庫NV)
ファイト・クラブ〔新版〕 (ハヤカワ文庫NV) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
感想の書きにくい小説だ。文庫版の解説を書いてくれる人もいなかった(?)ようで、翻訳者が「あとがき」を書いているのだが、「先にあとがきを読む人も多い」などと言い訳をしながら、小説の内容について語ることを回避している。さて、ファイト・クラブ。それは男同士が1対1で向かい合い、文字通りベア・ナックルで殴り合う同好会だ。およそ、これほどに非生産的な行為があるだろうか。そう。これはいたってアナーキーな小説なのだ。人格そのものだって破壊されてゆく。自己同一性も怪しくなる。新しい文学?少なくてもこれまで見たことがない。
2017/03/02
遥かなる想い
平凡な会社員だった ぼくが語る ぶっ飛んだお話である。 現代のアメリカの暴力を描く作品らしいが、 正直 あまり入り込めなかった。 ファイト・クラブの 設定が少し 奇妙であるため、軽く読めるのは 嬉しいが、 著者は何を描こうとしたのだろうか? ぼくと タイラーのよくわからない関係が 微妙な雰囲気を醸し出してはいるが… ひどく現代的な 展開だが、苦手な範疇の作品だった。
2019/03/27
のっち♬
完璧で安全な人生から救われたい不眠症の「ぼく」は映写技師と素手の格闘を楽しむクラブを作る。無駄を削ぎ、映像イメージの断片をリズミカルに重ねる文体は、混沌とした記憶と意識の交錯を力強く表現している。大胆不敵で自信に満ちたタイラーも魅力的で、ギャッビー的ロマンスとしても読ませる。自己同一性を失い、徹底的な破壊衝動が自他へ向けられる物質社会の病巣を扱ったテーマは今日的で、レイモンドを脅すシーンが象徴的。眠らせないことで生も死も昏睡させる精神的大恐慌、勝つか負けるかの「闘争」からの「逃走」の示唆はある種の境地だ。
2022/10/13
まふ
面妖な書き出し、その内容のトンデモ具合に面食らったが、「統合失調症患者の覚書ないし日記」と理解すればわかりやすく、ナルホドと思いつつ楽しく読んだ。ストリートファイトの愛好家クラブである「ファイトクラブ」をリーダーのタイラー・ダーデンが発案して規約を作り、同好者を募る。タイラーの恋人マイラーを絡めた主人公とのやり取りは興味深い。大規模な都市爆破計画をタイラーの指示で実行するが自分は死んでしまう。タイラーも当然死ぬ。というところでオワリ。タイラーは自分の分身であったようだ。 G514/1000。
2024/05/19
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
安定した仕事とコンドミニアムの生活に満たされない『ぼく』は眠れなくなった。「おれを力いっぱい殴ってくれ」と言うタイラーと出会い、二人で始めたファイト・クラブは問題を何一つ解決しなかったが、何一つ気にならなくした。規則第一条「クラブについて口にしてはならない」は守られず、倦んだ男たちを引き寄せ、組織は拡大していった。やがてメンバーの暴力への衝動は社会に向けられていく……。「現代風グレート・ギャツビーを描いた」と作者は記しているが、テロリスト集団が生まれる過程のようにも読め、破滅的なラブストーリーでもある。
2016/05/26
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