謎のクィン氏 (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-39 クリスティー短編集 5)
謎のクィン氏 (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-39 クリスティー短編集 5) / 感想・レビュー
星落秋風五丈原
時空を超越するクィンは常に突然現れる。彼は全てを知りながら自らはほとんど動かず、ワトスン役であるはずのサタースウェイト老人を指導し、真相を明らかにさせ、唐突に退場する。その名の示す通り英国のクリスマスシーズンに欠かせない道化役者(ハーリ・クィン)である彼は過去に起きた恋愛がらみの悲劇の謎を解き、愛の奇跡を演出する。
2006/06/04
旅人(𝒕𝒂𝒃𝒊𝒕𝒐)
有閑でお金持ちのサタースウェイト氏は、行く先々の「事件」のある場面で不思議な人物、ハーリ・クィン氏に出会う。いくつかの場面では、まだ事件は起こっていなかったり、過去の出来事について今でも苦しみの中にいる人がいて、クィン氏の導きによっていつの間にかサタースウェイト氏が、隠された真実へと辿り着き、それによって救われる人々がいる。物悲しい過去をただ断ち切るでもなく、真実の光によって癒されるような物語が不思議と心地よい。今までのクリスティー作品にあるユーモラスな面は、この作品にはないが、とても印象深い短編集。
2022/03/09
ばたこ
題名の通り本当に謎なクィン氏でした。相棒?のサタースウェイト氏も個性的。そして作品そのものもクリスティの他の探偵達のシリーズと比べても個性が際立つ感じがしました。どの短編もロマンチックで不思議でどこか影がある独特なお話ばかりでした。全14話しか執筆されていないのが惜しい!と思われる位どの話も面白かったです。
2023/03/25
madhatter
上質の幻想推理小説集。一切の生々しさを排除したクィン氏と、対極的に人間臭いサタスウェイト氏は、時に相容れない恋愛と常識の化身のように見える。寓話めいた「道化師の小径」のラストシーン、クィン氏はサタスウェイト氏と対立し、悪魔のような存在感を見せる。本来この二人がわかりあうことなどないのではないかとすら思わせる瞬間で、クィン氏を選んで破滅するか、サタスウェイト氏を選んで愛なき安寧を得るか、選択を迫られているような恐怖がある。
Olga
クリスティの作品のなかでも、クィン氏のシリーズは異色。でも、いちばん好きかも。
2023/06/20
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