真鍮の家 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-15)
真鍮の家 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-15) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
エラリイ・クイーン後期の作品。前期の作品にくらべ、ミステリとしての切れ味が衰えているのは残念。それでも小説としての完成度は高い。クイーン警視が妻のジェシーと風変わりな富豪の家に招待されて、殺人事件に巻き込まれる。真鍮があふれているお伽噺めいた風変わりな家で、ミステリの舞台として申し分ない。他の招待者は、富豪の遺産を狙っているのだが、金目のものは見つからずに、彼らは焦りを感じる。このあたりのプロットは、宝探しとして楽しめる。何回もどんでん返しがあって、最後に真相が明らかになるところがいかにもクイーンの小説。
2017/04/15
Tetchy
まずクイーン警視が結婚したという幕開けに驚いた。お相手は『クイーン警視自身の事件』で登場したジェシイ・シャーウッド!いやあ、あの結末から7作目にして結婚だとはまさに想定外。その彼女も含め、面識もない人々が老富豪に集められ、いきなり遺産を相続する権利があると云われるという不可解な謎に警視は挑む。遺産相続者たちのミッシング・リンクとお決まりのように殺されてしまう老富豪、そして彼が残した600万ドル相当の遺産の正体と犯人探しと宝探しを楽しめる1冊。晩年期でさえこんな作品があるから、クイーンは全く侮れない。
2012/11/26
**くま**
「クイーン警視自身の事件」で出会ったジェシイと、クイーンパパことリチャード(定年退職済み)が新婚旅行に行った直後の話。・・・ってことは、あのベタベタぶりをまた見せ付けられるのか? アメリカンなクサい台詞を耳にタコができるほど聞かせられるのか? そういうの苦手な私はもう読む前から内心恐怖していましたが、心配無用でした。今度のリチャードはちゃんと落ち着いてます。舞い上がりすぎてません。事件は殺人事件も起きるけど、主に宝探しになってます。どんでん返しあり、ちょっとだけどエラリイの出番もありで、なかなか楽しめた!
2014/01/19
ako
再読。クイーン元警視の結婚直後、妻のジェシイに富豪から招待状が届く。他にも6人が招待されており、いずれも富豪がかつてお世話になった人の娘や息子で、この中の誰かに自分の遺産を贈るのだという。様々な招待客とそれ以上に個性的な大富豪と召使い。富豪が殺され、元警視は退職した警官達と事件を調査するが失敗ばかりなので気が揉めましたが、ジェシイが夫を深く尊敬し、信頼しているのが伝わりとてもいい夫婦でした。遺産はどこにあるのか?犯人は誰なのか?エラリイは最後に少し出てくるだけ。
2013/06/25
浅木原
『クイーン警視自身の事件』に続く警視&ジェシィの話。ただしジェシィは大して活躍しないしこっちはエラリイが最後に出てきて解決をかっ攫う。老人が無関係な人間を相続人として集めた理由と、600万ドルの遺産が本当にあるのか、という2つの謎に警視たちが振り回される展開がメインで、殺人事件がその2つの謎の付属物みたいな扱いになってるので、館ものミステリに見せかけた宝探し小説ですね。ただ、ジェシィの立ち位置が有効活用されなかったり、『自身の事件』に比べてそのへんの割り切りが半端なのが物足りなさの元か。
2017/04/07
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