あなたに似た人〔新訳版〕 II 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫 タ 1-10)
あなたに似た人〔新訳版〕 II 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫 タ 1-10) / 感想・レビュー
Kircheis
★★★☆☆ Iと同様に、そこそこ楽しめる作品が続く。 『クロードの犬』は四つの短編が連なった中編だが、1番奇妙さは感じた。登場人物がいずれも癖のある奴らで大きな動きがあるわけでもないのについ読み進めてしまう。それ以外も毒のある作品ばかりで、『偉大なる自動文章製造機』なんか実際にこんな時代が来てもおかしくないと思えるリアリティがあった。『満たされた人生に最後の別れを』は、ありがちなストーリーで可もなく不可もなく。『サウンドマシン』は怪奇不思議小説で、個人的に好きなプロットだった。 追録の2編も好み。
2023/12/28
アナーキー靴下
収録作品の中で「偉大なる自動文章製造機」は異質に感じ、皮肉たっぷりの面白い話として楽しく読んだ。それ以外は前巻同様、読み終えた後に何か、受け入れがたいような気持ちが残る。「満たされた人生に最後の別れを」をのめり込むように読んで気付いたのは、こんなことをした経験なんてもちろんないけれど、自分の心の中にも潜んでいる何かによって、まるで自分であるかのように思わされてしまっているんだな、と。つつがなく日常生活を送っているはずが、何かの拍子に足を踏み外してしまう。もっと離れたところから楽しめるようになりたい…。
2022/05/27
藤月はな(灯れ松明の火)
「満たされた人生に最後の別れを」。ポンソビー夫人の讒言を信じ込み、恋人に真相を確認せずに復讐を成し遂げた知性的な男。ラストに事件の引鉄を引いたポンソビー夫人は意気揚々だと思うと苦々しい。口八丁で浮世を見分するクロード氏シリーズはブラックウッド作品のジム・ショートハウスシリーズや津原泰水作品の猿渡君シリーズみたいな風味ですね。「鼠退治」で出てくる鼠退治屋には津原氏の「超鼠記」を連想してしまいました。そしてラミングみたいな男っているよね~。「廃墟にて」は2ページながら終末SFの傑作だと思わずにいられません。
2016/10/08
HANA
奇妙な味の短編集の続き。後半は中編の影響もあるのか少々長い話が多く、上巻で感じたような引き締まったセンスの良さやインパクトは感じなかった。それでも「偉大なる文章製造機」からは初期の筒井康隆を思い出させられたし、「クロードの犬」の諸編からは何とも言えない薄気味悪さを感じさせられた。特に婚約者の父親と話していて、口からのでまかせがどんどんとんでもない方向に進む「ミスター・ホディ」、起きている事は明らかなのにいつまでも明らかにならない「ラミンズ」が個人的にはお気に入り。毒を含んだものが一番美味しいものです。
2013/08/21
Shun
ブラックユーモア短編の名手ロアルド・ダールによる短編集。行間から漂ってくる奇妙な味わいが癖になる作家です。収録作の中では「満たされた人生に最後の別れを」が最も印象に残る内容でした。裕福な暮らしと魅力的な恋人がいて、まさに満たされた人生のはずだった中年男。ある時、別な女性から恋人に関する意地悪な噂を聞かされた男は、ある仕返しを思いつく。それは高名な画家に彼女をモデルとした絵画を描いてもらうという内容で、実はこの画家の描く女性画には秘密があった・・・。そして華麗なる連中が集った晩餐会にてその悪戯は披露される。
2022/03/25
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