苦い林檎酒 (ハヤカワ・ミステリ文庫 91-4)
苦い林檎酒 (ハヤカワ・ミステリ文庫 91-4) / 感想・レビュー
セウテス
アリスは、20年前に殺人犯として処刑された父親の、無実を証明するためにイギリスにやって来る。そして犯人特定に繋がる証言をしたセオを訪ねという、過去の事件を再考する物語。特徴的なのは、当時では解明出来なかった事象が存在するとか、改めてトリックを解明するという設定ではない事。大人と子供や男と女など、私情の違いにより証言の意味合いが変化するという事だ。あるページから、今までの見えていた情景が、がらりと変わる驚きがある。ただ私的には、アリスの当たり前の様な態度や、セオの鼻持ちならない性格が、大いに邪魔になった。
2022/12/08
藤月はな(灯れ松明の火)
幼き主人公の証言によって一人の米兵が死刑となった。その男の娘らしき人物は主人公を探し出し、事件の真相を探るが・・・・。クリスティの「スリーピング・マーダー」を思い出させる回想の殺人。主人公が自らの考えに拘泥しすぎる自己弁護の肥大した偽善者にしか見えなかったのですが、犯人はもっと最悪でした。対してアリスやハリーなど一癖ある人々の方が魅力的なのは、関係者でもあった事件を私情を極力、突き放して疑いの可能性を潰しながら考えていたからだと思います。訳に盛り込まれた洒落も良かったので原文も気になります。
2013/01/17
Ribes triste
どうにも頼りない感じのシンクレアと、猪突猛進のアメリカ娘アリスのコンビが面白い。過去の殺人事件事件を再調査するうちに明らかになる事実。はたして真犯人はだれなのか。きっちりと作り込まれた物語はラウゼイらしい。シンクレア君に幸あれ。
2020/03/01
J・P・フリーマン
過去に起きた殺人事件を探る系のミステリかと思いきや、読んだ感じは主人公が子供時代の思い出を振り払い、新しい生活に進んでいくというものでした。腹の中でいろいろ考える主人公と、物事を直球に話すアクティブなアメリカ人女性の対比がおもしろく感じました。
2020/08/02
Mzo
森博嗣のルーツ・ミステリィ100より。ラヴゼイは初めて読みましたが、なかなか面白いですね。森さんが描写の丁寧さを誉めていたのも納得です。謎解きそのものは奇抜ではないですが、場面の緩急のつけ方が巧み。訳も読みやすかったです。それにしても、この「苦い林檎酒」は飲みたくないなぁ。一生トラウマになるよ。
2014/09/25
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