ブラック・リスト (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 2-18)
ブラック・リスト (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 2-18) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
重厚かつ複雑なミステリーである。それゆえに通常の3倍のページ数を要することになった。事件解決の端緒がほの見えるのが300ページを超えたあたり。物語の終盤になるも全容はなかなか把握できない。もっとも、社会的背景を熟知していれば、もっと早くに全体の構図が読み取れたかも知れない。読後にはそう思った。本書は、9.11以降に俄に成立した「愛国者法」への警鐘として書かれたのだろう。すなわち、1950~60年代の「非米活動委員会」とそれとが重なるところに成立するのが、まさにこの作品の存在理由であった。⇒
2021/07/18
遥かなる想い
アメリカのマッカーシー時代を題材に 9.11以降のアメリカの混迷を描く。 黒人ジャーナリストの死の真相を 追う過程で 浮かび上がる過去の「赤狩り」の 事実..アメリカの過去に何があったのか、 そして 9.11以降のアメリカはどこに向かおうと しているのか..「愛国者法」に対する 著者の危惧が物語に反映されている、そんな本だった。
2017/03/27
ケイ
この作者の作品は初めて読んだのだが、これは長く続いている女探ヴィクトリアシリーズのようだ。舞台は9.11後のアメリカ。彼女の過去の事件は知らなくても、あまりに読みやすい訳でどんどんと読み進んでいく。テロに対し、一致団結するアメリカと言えば聞こえがいいが、一種の赤狩りだ。集団心理が生む狂気と、それに対峙する女探偵ヴィク。非常に面白かった。前にもどってシリーズを読んでみたい。
2016/08/10
セウテス
V・I・ウォーショースキーシリーズ第11弾。あの9・11以後のシカゴが舞台になっている。郊外の高級住宅街のある一件の無人宅を、依頼により調べにきたヴィクは黒人記者の水死体を発見する。タイトルは1940年代から始まった、俗に言う赤狩りの際に使われたリストの事だと思う。同時テロにより施行された愛国者法により、テロ対策という大義名分の下、一般市民に対して行われている侵害の問題に、危惧を感じさせる背景があるのだろう。意味あるテーマだと共感はするが、サスペンスとしての楽しみは薄く、探偵物で使うべきか疑問に感じる。
2016/01/02
空猫
人間関係の軋轢例と、人種、階級、男女…などの差別問題と、9.11が原因で誕生した「愛国者法」を始めとする米国の社会背景と、ありとあらゆる問題を全て盛り込んだような内容な上、2-3世代が絡む時間の長さと、複雑に入りくんだ人物に苦労しながら、何とか読んだ。このパンドラの箱を開けたような騒動も何とか収まり、何も変わらず下層民は踏みにじられ、上級国民は元通り安泰。探偵(庶民)は最後に残った希望を胸に日銭を稼いで生きるのだ。今回は何もかも詰め込みすぎてお腹一杯。
2021/05/19
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