マルタの鷹 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 6-1)
マルタの鷹 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 6-1) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
ミステリの古典としてだけではなく、アメリカ文学の代表作の一つとして認められている名作。この小説の素晴らしさは文体にある。客観表現に徹した白熱した文体を読んでいると、他の作家の文体が冗長で締りのないものに思えてしまう。一見冷ややかな文体から滲み出てくる暗い情熱に強く惹きつけられた。自分の信条を曲げたくないと言う主人公サム・スペードの想いは、赤狩りの時代に政府の不当な捜査に、頑として協力しなかったハメット自身の生き方を反映しているのだろう。二転三転するプロットも見事で、ミステリとしても第一級の作品だと思う。
2015/07/19
藤月はな(灯れ松明の火)
「ガラスの鍵」が面白かったので代表作も読んでみました。金髪の悪魔然とした探偵、スペード。そのハードボイルドさと非情さは読むと読者を魅了しつつもラストにしみじみせずにはいられない。結局、彼が手引きしていたんじゃないかと疑う位のアンチヒーロー像が新鮮でした。女のカマトトぶりとか狸爺の食わせ者っぷりとかの描写も見事。
2012/09/20
セウテス
映画の影響で、ハンフリー・ボガートのイメージで読んでしまった。ハードボイルドと言うと、チャンドラーの作品の主人公の様に、世間一般の常識には縛られないが、自分なりの正義をしっかりと持った人物の活躍である。そう思っていたが、この主人公は何物にも左右されず、只ひたすら冷酷に目的を遂げようとするのである。マルタの鷹の争奪戦の話なのだが、詰まる所サム・スペードの生き方の話の様に思える。彼によって物語は始まり、彼によって物語は終わる、読者を突き放した様な感覚を与えるこの作品は、ある意味カルチャーショックを感じさせる。
2014/07/25
Shintaro
ダシール・ハメット初読みである。サム・スペードに会ってきました。作者序文にもあるように、スペードはそうありたいという男、ドリームマンそのものでした。ストイックなマーロウとは一寸違い、秘書のエフィにも甘えてしまう人間味がある、ちょいモテオヤジなスペード。と思いきや、ラストは非情そのものだった。脳内では映像(ボガードか)が躍動してしまう展開である。ハードボイルドの源流という本作とチャンドラー「長いお別れ」を読んだなら、あとは簡単、激流に流されるごとく読み進めるだけである。始めるに遅すぎることはない入門だった。
2015/07/26
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
ダシール・ハメットの代表作。ハードボイルドの草分け的な存在だろうか?謎の女が依頼した事件から黄金の鷹を廻る争いに巻き込まれるサム・スペード。1930年代のアメリカ、古き良き時代。いまとなっては読むとずいぶん時代を感じさせるところもあり、古いなあと思うところもあるのだが、やっぱりサム・スペードはカッコいい!★★★★
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