八百万の死にざま (ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 10-1)
八百万の死にざま (ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 10-1) / 感想・レビュー
遥かなる想い
アル中探偵マット・スカダーのミステリ。文体のテンポがよく、疲れていても安心して 読める。ただ、謎解きの楽しみは 全くないが…キムというコールガールが殺されたその背景なども、もっとふくらませた方がおもしろかっただろうに、とも思う。
セウテス
スカダーシリーズ第5弾。売春で生計を立てている女性から、仕事を辞めたいのでグループを仕切っている男チャンスとの間に入ってほしいと依頼がくる。チャンスに会ってみると、辞めるのは自由だと言うのだが、数日後依頼の女性は殺されてしまう。チャンスを疑うスカダーではあったが、そんな時チャンスから犯人を捜して欲しいと依頼される。タイトルの八百万とは、当時のニューヨークの人口の事であり、街の社会的問題を描きながらも、田舎から夢を抱いて来る人たちの歓びと悲哀を感じずにはいられない。ハードボイルドながら、シットリとしている。
2017/09/29
ずっきん
アル中から抜け出そうとする探偵マット・スカダー。ハードボイルドなのかな?硬質な筆致で綴られる30年前のNYの危うさと魅力、そこで生きる人々の息づかいや匂いまで感じる描写や会話に引き込まれる。登場人物がスカダー、チャンスを筆頭に皆魅力溢れまくり。そしてスカダーの最後の台詞と一行を読むために496ページがあるといっても過言じゃない。映画化でジェフ・ブリッジスとリーアム・ニーソンが演じたということはスカダーはアイリッシュですか?元NYPDでアル中のアイリッシュ?ツボど真ん中!続投決定です。
2018/05/03
つねじろう
マンハッタンの安ホテルそれがマットの住処。元腕っこきの警官で自分が放った流れ弾で少女を死なせた過去を持つアル中。もちろん家庭も崩壊。お酒と生活の為のもぐりの探偵。ね〜背負ってるよね〜。そこへ訪ねてくるブロンドで脚の長いセクシーボイスの別嬪キム。彼女は言うヒモと切れたいと。ほらほら気分出て来たでしょ?でまたこのヒモのチャンスが格好良いのよ。登場人物一人一人の造形に手抜きがなくニューヨークの街並みと共にしっかり映像として飛び込んで来る。ミステリアスさは無いけれど最後のマットの姿に泣くよ。完成度の高い一品です。
2017/02/23
白玉あずき
再読。一度読んだミステリーはもう読まないから処分するように、と言う娘に当てつけに読んだ本ですが、やっぱり好きだなあ。人の生死の無意味性、儚さ、むなしさに覆われた主人公の心象風景。最後に犯人を撃って事件を解決できた事で、やっと自分をアル中だと認める事ができたマット。依存症との闘いはやっとこれからだ・・・跳飛弾で無垢の少女を死なせてしまったという罪悪感、やましさから自己否定に陥っていた彼も、これから一度きりの大事な人生を立て直して欲しい。ということでシリーズ次作も読みたいな。チャンスという魅力的なヒモの今後も
2018/01/04
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