アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫 1)
アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫 1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
再読だが、それでも最後の1文には胸が詰まる。チャーリーがピュアな心を持っていたことに読者もまた救われる思いがするからだろう。知性と、他者を思いやる心とは両立しえないのか?これが、いわば本書の問いかけである。ただし、それはプリミティヴに提示されるのではない。なぜなら、チャーリーの内には常に知性の崩壊への恐れがあるからだ。いわゆる常態であることは、本人たちが気が付かないだけで、すでに悪意なのだろうか。アリスのように限りない優しさを持って接する場合でさえも。本書は、SFの新しい可能性を拓いたキース畢生の傑作だ。
2015/09/04
ヴェルナーの日記
本作の初期・中篇を読んだ記憶があり、とても感動したことを覚えている。チャーリーが賢くなっていくにしたがい、文体が変化していく記述法が新鮮だったし、彼の頭脳が、猛烈な速さで知識を吸収する過程が面白かった。それを踏まえて、本作・完全版を読むと、1つの欠点(これを欠点と呼ぶべきか、微妙だが…)に気がついた。完全版は、確かにチャーリーの内面、心の葛藤がよく描けているが、頭脳発達の限界が、鮮明になってしまった。つまりチャーリーは作者キイス以上に賢くなれない。人は自分より低脳なふりは出来ても、その逆は出来ないのだ。
2014/03/14
takaC
キイスへの弔意で先月原作を読んだばかりだがついでに日本語訳も読了。ダニエル・キイス文庫版は初読み。細かい部分で英語とは印象が異なったが大筋は同じかな。同じだろうな。たぶん。次は中篇も読んでみたい。
2014/07/23
ehirano1
実に1/4世紀ぶりの再読。当時は読み難くてギブアップ寸前でしたが、徐々に引き込まれて行き、読み終わって言葉が出なかったのを鮮明に覚えています。今回の再読では、「何かを得るには何かを捨てなければならない/何かを失う」という印象でした。本書ではそのトレードオフが余りにも残酷で、トレードオフは易しいものではないと思い知らされました。しかし、それでもそれを得に行く勇気は欲しいと思いました。
2024/03/03
absinthe
大学の時に読んだ本。知恵遅れの30男が、手術によって知性が高まり、やがて手術をした博士より賢くなるが、手術の影響は長続きせずやがて急速に元に戻っていく話。知性は人間を助けるかというテーマ。少年から見上げるような憧れの対象だったキニアン先生への愛がやがて恋の対象と変わっていくのが印象的。愛には知性にかかわらず不変の部分も変わる部分もある。知性は個人にとっては毒にも薬にもなる。知的だから愛してくれる人も、知的でないから愛してくれる人もいる。知的に由来する幸福もあるし、それとは無関係の普遍の幸福もある。
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