カメレオンのための音楽 (ハヤカワepi文庫 カ 2-1)
カメレオンのための音楽 (ハヤカワepi文庫 カ 2-1) / 感想・レビュー
Y2K☮
「手彫りの柩」はある意味で「冷血」を超えている。書き手を殺人事件の傍観者にしておかないイコール読者にもそれを許さない(フィクション性が皆無ではないとしても)。カポーティ健在を証明した傑作だが、彼の中では違ったのか。「うつくしい子ども」を読むと「ティファニー」のホリーはマリリン・モンローを想定していたのかなと思える。カポーティだけが知っている真のモンローなら確かに適役だ。ただ心の闇や誰もがひた隠すシャドウの正体に敏感過ぎるがゆえ、それを描き出すことで後年セレブたちの逆鱗に触れたのも事実。神は天才に手厳しい。
2021/05/03
たまご
ある情景を切り取っているかに見えて,その後ろには語られない多くのストーリーが隠れているような.ここで終わってしまう,もうちょっと続けてよ…とon goingな気持ちが,不思議な余韻をもたらしているような. 第3部の「会話によるポートレート」が,会話だけで進むのに,情景が鮮やかに浮かびます.野坂さんの訳,もすごいなー.
2017/09/05
吉野ヶ里
んんん? なんでかわからんが読みにくかった。カポーティなのになんでや。訳か? そんな不自然でもなかったが。序文が超良かった。ああいう洗練された自尊心好き。《単に出来の良い作品と本物の文学とには相違がある。》。文芸が一つの芸だということを自覚している作家。『カメレオンのための音楽』→不気味。会話がおしゃれでちょっとついていけないところがある。ピアノの音にカメレオンが寄ってくる話。『ジョーンズ氏』ジョーンズ氏。何者なのか……。
2016/06/13
神太郎
著者はかなり「苦しんで」この作品を描いたという。というのもこの作品の前作「冷血」があまりにヒットしたために作品が書けなくなってしまったのだ。 ヒット作を生んでしまったが故に「生みの苦しみ」を味わうというのはどの業界でもありうること。人々はヒット作から「その人らしさ」を見出し、それ以降は常にその「らしさ」を求めようとする。あるいは「革新」を。全3部からなるが、第1部は主人公が動かすが第2部以降は作者が聞き手として物語を動かしていく。そういう構成も実は生みの苦しみ故に生み出された演出なのかも。
2016/02/08
meg
カポーティを野坂昭如訳で読めるとは。うれしい限りだ。 とかく奇妙で狂気の物語。何かカポーティをみているよう。テネシー・ウィリアムズに捧げられた本書。“本“に魅了さることながら鏡で写すような描写力に、いい意味で体力を使った読了。
2024/01/27
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