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忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)

忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)

忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)

作家
カズオ・イシグロ
Kazuo Ishiguro
土屋政雄
出版社
早川書房
発売日
2017-10-14
ISBN
9784151200915
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忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫) / 感想・レビュー

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青乃108号

最近、色々な事をよく忘れてしまう。妻から聞かされたちょっと前の出来事も、さっぱり記憶になかったりする。まるでこの物語の竜の息にかかってしまった人の様。なので作中の人物の不安なモヤモヤ感は良くわかる。竜を退治すべく立ち上がる人々の物語は、そのクライマックスまではとても楽しかったのに、以降、ラストまでが長い。とても長い。そして、コミュ障の俺には妻と孤島で2人暮らしなんてとても無理だと思ってしまった。

2022/06/15

パトラッシュ

過去の記憶のせいで今日も各地でテロや虐殺や戦争が起きている。記憶がなければ北アイルランドやボスニア、パレスチナなどの惨事はなかったのでは。これがイシグロが本書を構想したきっかけではないか。過去を強制的に忘れさせられた偽りのおかげで民族や宗教絡みの憎悪が消え平和が保たれた社会と、すべての過去を自由に記憶することで果てしなく殺し合いの悲劇が続く世界のどちらが正しいか。『1984年』などディストピア小説によくある「記憶の抹消への反抗」が本当に正しいのか。そうした解答不能の命題を突きつけてくる恐るべき小説なのだ。

あきぽん

「記憶」という共通テーマのもとでバラエティに富んだ作品を発表しているカズロ・イシグロ氏の最新作は、なんと中世初期のイギリスを舞台にしたファンタジー。竜退治などファンタジーの王道ストーリーを踏みながら、現代の国際紛争などに投影できるように新しくツイスト。「ロードオブザリング」(指輪物語)も似た雰囲気で、主人公とお姫様は若者でなく老夫婦というのがミソ。忘れることも平和に健康に暮らしていくためには大切だ。記憶力が良すぎる人は生きづらいだろう。

2017/12/28

tokko

アーサー王伝説を下敷きにしているけれど知らなくても読めます。物語中にはガウェイン(のなれの果て)が登場したりイギリス人が読むとまた違った印象を受けるのでしょうが、「戦士」やら「騎士」やらは某ゲーム程度の知識しかないのでイメージは(物語中の)霧中のごとく曖昧模糊としていました。そんなマイナス要素を差し引いてもこの小説のテーマはかなり重く響きます。平和のためには「忘れ」なければならなかった過去、「忘れた」ほうがうまくいくけれど「忘れ」てはならない過去、そんな過去は僕たちにもあります。雌竜は今も生きています。

2017/10/23

びす男

カズオ・イシグロの作品には、上っ面な感想に逃げられない厳しさがある。その意味を捉えないと、物語が読めない■竜の吐く煙で、人々が古い記憶を失った世界。ファンタジー風だが、そこで露わになる問いは深刻だ。竜を倒すことは難しくない。しかし、一度忘れられた争いの歴史を、再び掘り返すべきか……そこまでして過去を知りたいか?■悪い記憶も取り戻す、と老夫婦は言う。「人生を分かち合うとは、そういうことではないでしょうか」。過去を知り、乗り越え、信じる、あるいは戦うこと。人類が背負い続ける課題が、見事に浮き彫りになっていた。

2018/07/03

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