私の名前はルーシー・バートン (ハヤカワepi文庫 ス 2-2 epi102)
私の名前はルーシー・バートン (ハヤカワepi文庫 ス 2-2 epi102) / 感想・レビュー
どんぐり
クライスラー・ビルの照明が見える病室。いまとなっては昔、9週間の入院となったルーシー・バートンが疎遠だった母親が見舞いに訪れた5日間を述懐する。母親に似たくないという希望で、若い頃に受けた施術。別れた夫と娘たちのこと、アリゾナの創作クラスで「ストーリーで悩んじゃだめ。どうせ一つしかないんだから」と、セアラ・ペインが言ったことを思い出す。そして、いまは作家となって書いている「私」。ストラウトの小説だ。
2024/09/03
NAO
この作品は、ルーシーが10年ほど前に9週間に渡って入院していたときのことを思い出しては語るという形をとっている。夫が呼び寄せてくれた母親とルーシーが病室で話したことと、その会話を契機として思い出された子ども時代のこと、さらに、ところどころにニューヨークに来てからルーシーが出会った人々についての短い挿入がある。そういった語りの中で、ルーシーがどのような家で育ったかが明らかになる。そういう育ち方をして社会に出ることの厳しさ、辛さ、悲しさ、寂しさ。現在ルーシーは、離婚に踏み切り作家となっている。⇒
2022/09/19
こばまり
章立てが短いせいか、頁を繰る手が止まらないという程ではないが、もしこの倍の長さがあったとしても、うだうだと読んでいたい不思議な魅力。誰だって一つのストーリーしかないという言葉が何やら胸に迫る。
2023/06/22
penguin-blue
病院の白い壁の中、病気の原因もつかめず、夫と二人の娘を残して退院の目途がつかないルーシー・バートンは孤独と不安の中にいる。付き添いに来てくれたのは何年も会っていなかった彼女の母親。背表紙の内容紹介から、当初は母と娘の確執と和解の感動物かと思ったが、実際は退院後も含めたルーシーの人生が淡々と語られる。人生は大きなドラマだけでなく、些細な出来事や会話の積み重ねで作られ、後になって意味を持つ物事もある。良い思い出ばかりではないけれど、人生総てを肯定的に受け止めることでの最後の一文であり、タイトルなのだと思う。
2023/01/31
サンタマリア
ひたすら人生を突き進む、突っ走る、躊躇しないこと。大切なことはそれで、この小説の仕掛けや構成は二の次でいい。
2022/06/30
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