嫉妬/事件 (ハヤカワepi文庫 エ 1-2 epi106)
嫉妬/事件 (ハヤカワepi文庫 エ 1-2 epi106) / 感想・レビュー
Sato19601027
ノンフィクションなのかと思うほど感情が迸る文章に脱帽。2022年ノーベル文学賞受賞作家アニー・エルノーが二十数年前に書いた中編小説。「嫉妬」醒めた関係の相手に異性の影を見て、心の中に芽生えた熱い感情を何回も何回も吐露する物語。胸に針を刺すような苦しい作業であり、激しい怒りでもある。「事件」フランスで中絶が非合法であった時代の中絶を記録と記憶で蘇らせる私小説風物語。女性が命の危険に晒されながら暮らす不安と中絶をしてくれる医師を捜す日々、堕胎の瞬間の生々しい描写など、読むのが苦しくて辛くてたまらなくなる。
2024/08/24
まふ
「嫉妬」と「事件」の2中編作品を内容とする。「嫉妬」は恋人関係であった男と自分から言い出して別れた後にその男が別の女性と恋人関係になったと聞き嫉妬心を猛烈に高め、その女性の人となりを執念深く調べ上げる自分を別の自分が観察する、という構図。「事件」は本人が学生時代に経験した妊娠中絶の一部始終を生々しく描写した「事件簿」。両作品ともに女性の立場からの性への生々しい偽りのないステートメントであり、世界中の女性の普遍的な世界へとつながってゆく意識の強さを感じた。この作者は実に「強い人」である。
2023/01/14
遥かなる想い
ひどく私的な物語である。 元彼の恋人への嫉妬、中絶の経験が赤裸々に語られる。女性の中に膨れ上がる嫉妬に駆られた妄想が生々しく凄まじい。自分自身の体験を 題材に選び、自分視点で淡々と描く… 著者らしい題材と文体に終始した二つの物語だった。
2024/10/27
hiroizm
ノーベル文学受賞記念読書。恋愛に関しては諦め早いところあってか「嫉妬」については、そこまでやる!?と驚く場面が多かった。でも分析的な記述による著者の情念の強さ、喪失感の深さ、制御不能の怒り、戸惑い、苦しみの描写が切実で、なるほどね〜と頷けるところも少なからず。自分もこのくらいのめり込んで本気度を示すべきだったかな?と過去の恋愛を反省したり。嫉妬の対象である元カノの交際相手が年上の知識人女性という設定がフランス映画ぽい味わい。興味深い小説だった。
2022/11/10
はるを
🌟🌟🌟🌟⭐︎。ノーベル文学賞受賞作。【嫉妬】付き合っていた男と別れる事になったけれど、その後も友達としてちょいちょい会っていたが、どうやら未練が残っていて、さぁ困った、っていう話。嫉妬という感情は怖いね。ここまでするか、とドン引き。でも苦しかったよね。それが抜けた時の描写がリアリティがあって一種のカタルシスを感じた。会う男の方もどうかしてる。【事件】中絶が違法だった頃のフランスが舞台でそこで望まぬ妊娠をしてしまう女性の孤軍奮闘振りを描いた物語。2022年12月に公開した映画も鑑賞済み。
2022/12/07
感想・レビューをもっと見る