五匹の子豚 (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 21)
五匹の子豚 (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 21) / 感想・レビュー
MICK KICHI
過去の忌わしい殺人事件、処刑された容疑者の無罪を探るポアロ。五人の証人をマザーグースの唄に准え、証人の供述と手紙で構成された事件の炙り出しから、謎解きになだれ込むシリーズ屈指の傑作。人間の心理だけを推理の根拠とするポアロの姿勢が過去の責苦に苛まれた悲劇から驚愕の回答へと結びつける。BBC-NHK版も合わせて鑑賞。記述構成上の妙で引っ張る作品の再現の難しさはあったものの、ドラマ的クライマックスは良く出来ていたと思う。画家の作品が主題でありながらそのものを見せないのは賢明な演出。
2019/02/19
財布にジャック
16年も経ってしまった殺人事件をポアロが灰色の脳細胞を駆使して見事に推理してみせるという小説でした。中盤あたりから、私にしては珍しく犯人はきっとあの人だろうと自信を持って読んでいました。ところがどっこい最後の最後に大どんでん返しが待っていました。殺されたのが画家というのも興味深かったです。でも、絵画がらみの殺人というわけではなく愛憎劇だったのはちょっと期待はずれでした。
2013/05/02
セウテス
ポアロシリーズ第21弾。〔再読〕ポアロは16年前夫殺しの罪で、獄中で亡くなった母の無実を証明して欲しいと娘から依頼される。いわゆる「回想殺人」というスタイルで、極めて困難な設定のミステリ。物的証拠やトリックが在る訳でもなく、ポアロは5人の関係者に話を聞くのみ。会話に隠された二つの意味にとれる文章と巧みな伏線、見方が変われば一瞬で反転する真実、敢えて見事な仕事だと言いたい作品。それ故ポアロが一気に真相を明らかにするラストは、本当に気持ちが良い。全ての仕掛けが活きており無駄が無い、間違いなく作者ベストの良作。
2017/04/08
依空
ポアロシリーズ21作目。16年前に起きた殺人事件を関係者の証言だけで再調査するという物語で、困難な依頼を見事に、そして一気に解き明かすラストがとても面白いです。同じセリフでも見方を変えれば意味がガラリと変わる驚きと面白さを、十分に堪能できる1冊でした。シリーズ中、唯一ドラマを先に見ていました。人と場面のカットは変わっても、ほぼ同じことを繰り返しているドラマは単調に感じたものです。けれど今回は内容が分かっているためか、小説だったためか、そこら中に貼り巡らされた巧妙な伏線とセリフを拾うのが楽しかったです。
2016/12/29
aquamarine
この本では過去の事件を関係者の証言から紐解くだけで新しい事件が起こるわけではありません。それなのにいつの間にか惹きつけられぐいぐいと最後まで読まされてしまいました。マザーグースの五匹の子豚さながらに事件当時の様子を綴った5人の手記。同じ些細なことを別の思いを持った人が見るとどれだけ違って見えることか。ポアロの的確な5つの質問により暴き出される真実は、芸術家という被害者の人となりと被害者の妻の思いの推移が印象的でした。派手な作品ではありませんがとても読み応えがあり心に残る作品となりました。
2015/02/04
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