マン島の黄金 (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 64)
マン島の黄金 (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 64) / 感想・レビュー
Kircheis
★★★★☆ クリスティの死後20年以上経ってから出版された拾遺集。 正直読む前は「微妙な出来栄えの短編を集めた作品なんだろうな」と思っていて、あまり期待はしていなかったのだが、実際にはかなり面白い話がほとんどで満足感の高いものだった。 表題作こそ宝探しイベントのヒント用の話なので、読んで面白いものではないが、それ以外はほぼ全部良かった気がする。 ただし、ポアロ物の二編は『クリスマス・プディングの冒険』に収録済みのもの(の原型)だ。 1番のお気に入りは心温まる感動作『孤独な神様』かな。ウルッときたし。
2019/04/10
yumiha
不思議なクィン氏の40年後が読めると思ってチョイスした短編集。クィン氏そのものは、やはり謎のままだけれど、サタースウェイトの解いた謎は、予想通りだった。表題作は、マン島の観光客誘致のための呼び水として書かれた作品なので、物足りなかった。かのポアロも2作に登場するが、既視感あり。後書きによれば「バグダッド大櫃…」は『黄色いアイリス』にも収録されていたとか…大櫃つながりで映画『ロープ』(ヒッチコック監督)を連想してしまう。もう1作は、クリスマスプディングを作る台所の場面の映像が浮かんだので、BSで見たのかな?
2022/11/14
いっくん
短編集14作目。クリスティ没後に発掘されたミステリだけでなく、ホラー、ロマンス、サスペンスなどなど(特に表題作は観光客集めの宝探し懸賞小説)とバラエティに富んだ短編集。お気に入りは『夢の家』『名演技』『崖っぷち』『孤独な神さま』『壁の中』『白木蓮の花』。不穏な余韻に浸りながら、幸せにほっこりしながら、スカッとさせてくれるお得な短編集でした(^_^*)
2019/01/26
ワッピー
クィン氏シリーズ最後の「クィン氏のティー・セット」目的で読む。老境のサタスウェイトと最後の邂逅を果たすクィン氏に涙。憧れと恐怖の源「夢の家」、狙われた看板女優「名演技」、奪われた幼馴染「崖っぷち」、ポワロを騙す「クリスマスの冒険」、ロマンス色濃い縁結び「孤独な神さま」、マン島観光誘致のための企画小説「マン島の黄金」、画家を操る妻「壁の中」、妻を狙われた男「バクダットの大櫃の謎」、愛の翻弄3作「光の消えぬ限り」・「白木蓮の花」・「愛犬の死」収録。クリスティのストーリーテリングの腕の冴えには、ため息が出ます。
2019/03/18
藤月はな(灯れ松明の火)
クリスティが失踪前に書いた「崖っぷち」は善人であり、自分の醜いエゴも抑えて満足している人間の醜さが「あれほど自分中心になると」という介護人の言葉ではっきりと提示されたのが印象的でした。「愛犬の死」は愛犬によって人生を決めていた女性に対する人生の皮肉が見事。「壁の中」は茫洋とした結末になぜかぞっとしました。「白木蓮」は意気地のないのに卑怯な優しさはあるリチャードに対してテッドの下した決断に拍手を送りたいです。
2012/09/13
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