春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) / 感想・レビュー
W-G
ずっと気になっていた一冊。この本の”重たさ”というのか、刺さる人と何も感じない人が両極端に分かれそう。まったくピンとこない人にとっては、どこが山場で何がオチなのか全然理解出来ないのではないだろうか。しかし、そういう人が手に取らないような邦訳タイトルをつけているところが出版社の上手さ。本当に平坦な物語なのだが、ジョーンが家に帰りついて夫に声をかける瞬間。この一言だけで読ませてしまうクリスティ、さすがです。『アガサクリスティ完全攻略』にあったように、まさに読者に呪いをかける本。
2017/12/15
Tanaka9999
2004年早川書房発行の文庫本。解説が栗本薫。解説によると、『哀しい、恐ろしい物語』。人によって感じない人もいあるかも、とも書いているが、少なくとも砂漠のシーンは物寂しく表現されているので寂しくは感じるのではのだろうか。しかし、解説を読んでなぜ私がこの話を非常に読みづらく感じたのかわかった気がする。自分は、なんとなく『怠惰と怯懦』に流されいるのではないか、もっと自分自身に対する決定をなすべきでないのか。うーん、いろいろと難しい。
2020/08/14
テル35
とにかく、衝撃を受けた。人の心の深みをもっと知りたい。
2020/04/16
Kepeta
これまで読んだ本の中で最も怖い本だった。ここまで透徹・達観した目線でこの世を見ていた事を薄ら寒くすら思う。周りに何もない砂漠の宿泊所の光景は正しく「彼岸」だ。 そこで見て見ぬ振りをしてきた自分自身と向き合い生まれ変わったはずのジョーンが、ホームグラウンドである自宅に戻ってから選択した道、それを受けての夫ロドニーの対応...無間地獄を思わせる業の深さ! 人生における怠惰と逃避の行く末をここまで非情に突きつける凄まじさに慄然としつつ、我が身を顧みる...
2019/05/16
nobby
「かわいそうな(プア)リトル・ジョーン」何て哀しい女性なんだろう…でも、それはあくまで読者も含め周囲が感じることだ…少なくとも愛する夫がいる限り幸せなのだ…「そう、ぼくがいる」その見せかけの優しさが実は憐れみだとしても…シェイクスピアのもの悲しい一句をタイトルに描かれるのは、満ち足りた家庭を自負する主婦の回想。難航する旅路の途中に、人も死なず特に事件も起こらない。ただ徐々に思い起こされる誰にも何事にも自らを押し通す様は痛々しいばかり…初めて抱いた孤独や懺悔の念に戸惑いつつ彼女の下した決断は寂しくもやはり…
2020/05/21
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