牧師館の殺人(クリスティー文庫) (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 35)
牧師館の殺人(クリスティー文庫) (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 35) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
ポアロと並んで人気シリーズとなるミス・マープルの第1作。ミステリーにはあまりなじみがないのだが、本編では重要な情報が後から出てきたり、偶然が作用したりすることからすれば、謎解きの楽しみは薄いのではないかと思われる。もっとも、ミステリーの熟達した読み手にとってはそうではないのかもしれないが。物語としての醍醐味は、終幕部の少し前あたり、すなわち、クレメント牧師の推理をミス・マープルが覆すあたりにあるだろうか。また、価値付けという点で言うならば、この時期に早くもプロファイリングの概念を導入していたことだろうか。
2015/12/16
nobby
「彼女はすべてを見ているんです」なるほど、それがミス・マープル!その名高き女性名探偵にようやく出逢えて嬉しいかぎり♬物語の舞台は英国片田舎の小さな村、そこで起きた誰からも嫌われている治安判事の殺人…「人間誰しも悪意に満ちている…」と彼女が呟く通り、怪しき人物や事柄の羅列に事態は混迷を極める。それ故に最後に真相明かされてみれば、実に細かい伏線だらけだったことに感動しかない!思わせぶりに独自の行動目立つポアロに比べ、執拗な人間観察からじっくり全てを繋げていく老婦人もなかなか怖い…どちらにも焦らされるけど(笑)
2020/02/28
優希
面白かったです。牧師館で起きた殺人から始まっていくのですが、その緻密さや崩せないアリバイ、思いもよらない犯人と終始騙されっぱなしでした。画家の自首で無事解決と思いきや、そこからが本当の物語の幕開けだったのですね。容疑者が7人というのに驚かされます。全てが明らかになったとき、今まで見てきたものは何だろうと思わされる。そこがある意味狙いなのかもしれません。牧師の聖職者ながら人間臭いところや、ミス・マープルの冴え渡るところなどがツボでした。
2017/02/25
まふ
ミス・マープルシリーズ長編第1作目。ロンドン郊外の村の嫌われ者で有力者のプロザロー判事が牧師館の書斎で拳銃により殺された。画家のレディングが愛人のアン夫人を庇って自首するが証拠不十分で釈放されたり、怪しい人物がぞろぞろ出てくるが、決め手がなく犯人が判明せず暗礁に乗り上げたときに、老嬢ミス・マープルが鮮やかに謎を解いて解決し、スラック警部やメルチェット警察本部長を唸らせる。突然消音銃が出てきたりして強引なところもあるがいろいろと工夫された謎解きで、アガサ小説の「軽快」な魅力が十分に楽しめた。G1000 。
2023/03/15
藤月はな(灯れ松明の火)
誰からにも嫌われる大佐が牧師館で殺された。すぐに犯人は自主してきたが・・・。「村の人たちを観ていると世の中にいる人間の性格や個性がほとんど、わかってくる」という言で有名なマープルおばさんの初登場作。それでも嫌味に感じないのは彼女が真に情愛に溢れるご婦人だからです。真相はアガサ・クリスティお得意のあれでしたが、家庭内の不和や田舎での噂話などの描写によって攪乱させて気づかせない手腕は流石、クリスティ。密告文で揺れたけど、愛情深い牧師夫婦を思いやった一言を最後に残すマープルおばさんが小粋。
2015/08/27
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