終りなき夜に生れつく(クリスティー文庫) (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 95)
終りなき夜に生れつく(クリスティー文庫) (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 95) / 感想・レビュー
MICK KICHI
<マンスリー・クリスティー>突然暗がりの中から浮かび上がった邪悪の正体。凍った心が外気に触れた時、恐怖が辺り一面を覆う...。驚愕のストーリー、何人をも許容しないダークな心を抱えて人は甘美な夢に酔えるのか。クリスティーの凄みを真に感じる作品。正義と言えるものが全く存在しない世界、ここにはポアロもマープルもいないのだ...。悪意と恐怖のみ。作者の筆致からは、微塵も顔を出さずある意味、微笑ましいほど牧歌的な世界が何か不穏な空気が見えた瞬間から読者は奈落に落とされる。こんな話があっても良いのか...。唯々呆然。
2019/01/17
愛玉子
甘やかな喜びに生れつく人もいれば、終わりなき夜に生れつく人もいるーー貧しい若者と富豪の令嬢が恋に落ちた。若者が語る初々しいロマンスは甘く素朴で、しかし最初からどこか不吉な影が差す。ジプシーの呪い、悲劇を予言する老婆、忌まわしい災いの予兆。人は人生の大切な瞬間に気づかないものだーー取り返しがつかなくなるまで。最も欲しかったものはもう手に入れていたのに、それに気づかず自らの手で壊してしまった。分岐点は幾つもあった。夜へ続く道を選んだのは愚かな自分。幻が手をすり抜けていく、まるで呪いのように、罪の報いのように。
2021/02/12
yu
Kindleにて読了。いやぁ、クリスティの作品ですなぁ。全くもって最低な人間が犯人だった。死ねばいいのにって思うわぁ。
2019/06/09
みうか
恩田陸さんの作中で「怖い話」として登場したアガサの作品。最後の種明かしまでは、どうもサラサラと上辺だけを撫でているような状態で、腰の据えどころがない。何か違和感があるのにその正体がハッキリしないので、モヤモヤとした不安が付きまとう。しかしこの「違和感」や「不信感」がいかに大事か、そしてそれに気づかないふりをしながら事を進めるといかに危険か、直感に従い正しい道を選ばなかったらどうなるのか、それを大富豪の娘と労働者階級の青年を通して見せてくれる物語である。ロマンスのご利用は計画的に(怖)。
2018/01/17
やきいも
傑作。クリスティーが自らのベストにも選ぶサスペンス小説。呪われた「ジプシーが丘」で美しい女性と恋におちた主人公。その後に様々なアクシデントが起きる。そして最後には...。「愛と憎しみと欲望-この3つは同じではないか?」(本書330ページ)等という印象的な表現も多い。引用されているブレイクの詩が美しく、英国文学の伝統でもある格調の高さも感じさせる。読んだ後には深い満足感がありました。
2018/09/03
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