ブルー・ドレスの女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 モ 2-1)
ブルー・ドレスの女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 モ 2-1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
ミステリーに分類されているが、私のイメージするそれとは随分違っている。サスペンスフルなハード・ボイルド小説といったところか。社会派小説でもあるが。物語の舞台は1948年のロス・アンジェルス。キング牧師等の公民権運動は、まだまだ先の話だ。したがって、ここには黒人に対する差別が半ば公然と跋扈していたし、彼等自身も複雑な心境の中にあった。この小説は、最後に明らかになる女の最大の秘密を含めて、そうした背景の理解なしには成り立たない。小説は実に軽快なジャズのテンポで語られるが、ヒリヒリする皮膚感覚も味わえるはず。
2015/10/28
セウテス
【イージー・ローリング シリーズ】第1弾。ウォルター・モズリイ デビュー作品〔再読〕1948年ロサンゼルス、主人公イージーは失業中であった事から、金を稼ぐ為に人捜しを引き受ける。依頼の白人女性ダフネを捜して、イージーは探偵という仕事を覚えていく話でもある。本作の後イージーは探偵として生活し、十数作品のシリーズとなる。物語はかなりタフなハードボイルドで、奴隷制がかつて存在したアメリカだからこその、独特な心理や背景が心に残る。壮快なジャズのテンポで語られるとの感想があったが、私も全く同じ感覚で読みやすかった。
2020/11/03
扉のこちら側
初読。2015年993冊め。【39/G1000】【第3回G1000必読チャレンジ】犯罪小説としてより第二次大戦後間もないアメリカの黒人社会の描写に関心。冤罪や暴力など、黒人差別がひどい。しかし一見黒人に優しいような某社長も、幼児に対するような接し方であり「対等な人間」としてはみていない。著者は黒人とユダヤ系の血を引くということ、連合軍として従軍の経験があることからノルマンディ上陸作戦やアウシュビッツの描写などもあり。「ヨーロッパにあって、ユダヤ人は千年以上の昔からニグロだったのである」。続
2015/08/16
NAO
1948年、ロサンゼルス。失業したてのイージーは、なじみの酒屋の店主から、白人女性を探してほしいという依頼を受ける。白人の女性を探すのに、なぜ黒人のイージーに白羽の矢があたったのか。そこには、その白人女性ダフネのある秘密が絡んでいた。そして、イージーとダフネにはある共通点があった。「黒んぼはあるがままの自分を受け入れないかぎり、幸福になれっこないんだ」というマウスの言葉は、なんとも重い。
2018/12/30
harass
1948年のロサンゼルス。失業者の黒人の主人公は人探しの仕事を引き受けた。白人女性のダフネを知る人物を見つけるのだが…… ハードボイルドもので、舞台は公民権運動前で人種差別は普通だった時代だ。正直途中までじれったい印象があったが話が動き出して読書速度があがった。人種問題について著者の思いが滲んだ作品で調べると彼はユダヤ人と黒人のハーフなのだそうだ。個人的に映画『白いドレスの女』を念頭に置いて読んでいたがまったく違っていていい意味で裏切られた。ただ邦題が似てるだけで、原題はまったく違っていた。
2016/12/28
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