氷の闇を越えて (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 12-1)
氷の闇を越えて (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 12-1) / 感想・レビュー
佐々陽太朗(K.Tsubota)
著者の最新作『解錠師』を読み、再読したくなり本棚から取り出した。読んだのはいつだったか。おそらく十数年前のことだっただろう。再読であっても緊迫感をもって読ませるところは流石。極上のハードボイルドです。若き日の挫折。人生を変えてしまった出来事とそれによって受けた心の傷。そこから立ち直ろうとする克己心。繊細で弱い面を持つ人間でありながら、あるべき自分を追い求める姿に魅力を感じ、思い入れたっぷりで読みました。シリーズ第二作『ウルフ・ムーンの夜』も読もう。
2019/04/09
goro@80.7
成りたくてなったわけじゃない私立探偵アレックス・マクナイト。警官時代に喰らった銃弾が取り出せずに胸の中にある。ハードなボイルドだなと思っていると変化球が来た。練られた構成とアレックスの人間臭さにこちらが心配になるキャラクターが良い。銃弾を撃ち込んだ狂人ローズは終身刑で刑務所の中だが恐怖とともに襲い掛かる。果たして事件の犯人はローズなのか?今後もアレックスは探偵を続けているようなので2作目もどんな展開になっているのか楽しみなシリーズです。
2020/11/01
タツ フカガワ
14年前の警察官時代に挙動不審の男に銃撃され、いまも心臓近くに弾丸が残ったままの私立探偵アレックスの周辺で殺人事件が連続して起きる。やがてアレックスの家にローズと名乗る犯人から手紙が届くが、ローズこそアレックスを撃った男で、いまは終身刑の身だった。『解錠師』の作者のデビュー作。カナダと国境を接するミシガン州の小さな町を舞台に繰り広げられるミステリーで、意外な結末や、屈託を抱えた探偵のキャラクターが心に残る作品でした。
2021/12/05
DERIA
元キャッチャーで元警官で私立探偵に仕立てられた男アレックス。警官時代に受けた銃弾がまだ体に残っている。その過去を操られて彼の周りで事件が続く。暗い過去を持つ金持ちの母は強いというか思いのままに人を使う。息子の友人であったアレックスに目を付けたが、息子はどこまで知っていたのか。あくまでも母の押切であったと思いたい。サイコな犯罪者がでてくるがある意味それ以上にこの母は怖い。
2014/05/07
白玉あずき
マイナーリーグを2年で挫折、警官となるも職務中に相棒を亡くし、自分も死に損なって退職。家庭崩壊。障害年金とコテージの管理で細々生きている40代後半の主人公。それだけで彼の人生を何とかしてあげたい、と思ってしまう。孤独と悲哀を背負う中年って、やっぱり王道よね。ハミルトンはキャラ作りが上手だ。「正義」が通らない「すっきりしない感」は多少残るものの、中年ともなれば人生の割り切れなさは百も承知。渋くて良いシリーズだと思います。
2013/01/13
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