解錠師 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
解錠師 (ハヤカワ・ミステリ文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
560ページに及ぶ長編だが、読了に要する時間は短かかった。ページを繰る指が止まらないのだ。つまり、それだけ読ませる魅力に富んでいるということだ。この作品にはいくつかの顕著な特質があるのだが、まずは時間軸の設定がそうだ。すべてが終わって、これを書いている現在時。すべての発端となった、あの空白の一日。それから現在に至るまでの時間(これは複線的な時間として展開する)。2つ目は主人公のマイクルが最初から最後まで一言もしゃべらないこと。そして、3つ目がタイトルになった解錠である。また、物語を推進させてゆく力は⇒
2019/06/16
遥かなる想い
2013年このミステリーがすごい!海外部門1位。幼いころに起こった事件により、ものを言わなくなったマイクがアメリアと恋におち、彼女を守るために錠破り師へとなっていく過程を 過去に遡る物語と並行させながら丹念に描いている。最後の将来への希望を抱かせるような終わり方もよい。
2012/12/09
青乃108号
数奇な運命をたどった【解錠師】の物語。彼は8歳の時に起こった事件以降、9年間言葉を発する事が出来なくなってしまっていた。現れる運命の少女、アメリア。彼女を守りたい、その一念で彼は悪党に加担し金庫破りを続けるが。物語は現在パートと過去パートを行き来し、少しずつ語られる。複雑な鍵の仕組みを見抜き繊細な技でもって次々に解錠して行く彼。600ページに及ぶ話をグイグイ読まされ、気付いた時にはエンディングである。長くてハードな物語だが、彼の力強い決意表明と共にエンディングを迎え、読後感は爽やかである。良作だと思う。
2022/01/25
おしゃべりメガネ
’12年の「このミスがすごい!」海外部門第一位の作品です。他の方のレビューにもあるように、決して否定的な意味合いではなく、今作をミステリーと位置付けるには多少の違和感を感じます。寡黙な一人の少年の成長期(記)が抒情的にえがかれており、ドラマティックな展開で進んでいきます。海外モノにしては珍しく?前半からのスローな‘もったり感’も少なく、最初からスラスラと読み進めることができました。やはり主人公がサイレントなだけに印象薄は否めませんが、そこがまた印象的といえば印象的なのかもしれません。他の作品も期待です。
2012/12/16
utinopoti27
鍵を解くことに稀有な才能を持つ、失語症の青年・マイクル。本作は、彼が鍵に興味を持ち、若き解錠師になるまでと、その才能を利用され、数々の犯罪に巻き込まれてゆく2つのシナリオが並列で進行します。そのシナリオ同士の時間軸が接近するにつれ、ジワジワと不穏な空気が満ちてくる構成の妙が素晴らしい。一方で、「解錠」という、一般的には重大犯罪の入り口でしかない行為を、ここまで綿密かつ詳細に、緊迫感あふれる表現力で描き切るとは、並大抵のこだわりではないなと。恋に冒険に、マイクルの瑞々しい感性が迸る青春物語としても秀逸な一冊
2019/06/22
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