無実 (ハヤカワ・ミステリ文庫 コ 11-2)
無実 (ハヤカワ・ミステリ文庫 コ 11-2) / 感想・レビュー
のぶ
ある意味、危険であると同時にコミカルな作品だった。前半と後半で随分印象が変わっていて、前半はウディ・アレンの映画を観ているようであり、ノボコフ「ロリータ」を多分に意識しているような印象だった。後半は一種のクライム・ノベルでありミステリーとしても充分の楽しめる小説だと思った。二流の作家がある作品でヒットして有名になったところである人物が、かって関係を持った娘だと法的な申し立てを求めてくる。主人公のウルリクソンの葛藤だけで全編を持たせてしまう感じ。良くも悪くも事件に翻弄されるウルリクソンに哀れを感じた。
2016/09/16
こーた
すべてを知っているのは、本を読んでいるわたしたちだけなのである。だから登場人物の行動がもどかしく、「志村うしろ!」とおもわず教えてあげたくなる。そうやって興奮し、いちいちツッコミを入れながら読んでいるから、もっと大きな伏線を見逃す。全部見知っていたはずなのに、最後の最後で、何も見えていなかったことに気づかされて、驚愕する。まず見せる。そして焦らす。より大胆に。ときに繊細に。それは老獪なマジシャンのようで、さながらヒッチコック映画のよう。サスペンスとは何か。そのお手本のような小説。
2016/12/31
ロア
「表紙がかっこいい!分厚くて読み応えありそう!」という理由で手に取った本書。実はアメリカ本国では40もの出版社に断られ続けたという曰く付きの大問題作だったということを、読了後に解説を読んで知りました。デビュー作が大絶賛されたのに2作目は異例の受入拒否の嵐。41社目にしてカナダの出版社から、その後やっとアメリカの出版社から刊行されたとの事で、私は物語として純粋に存分に楽しんだけど確かにある種の人達をヒステリックにさせる面もある事は否めない。けど、そんな人達を満足させる為に出版自粛とかならなくて良かった〜。
2016/07/29
本木英朗
小説として描かれる犯罪の悪辣さにここまで憤りを感じ、そして読者の無力さを味わったのは稀有の体験だ。唾棄すべき存在としての犯人。彼の狡猾な知恵と無慈悲な偶然により進行する破滅への序曲。彼の笛に踊らされる二人の男女には、その愚かしさへのいら立ち以上に、人の心理の脆さと危うさに感じ入る他ない。「家族の絆と愛情」が、この作品ではあまりにも無情に嘲笑される。だからこそ、その重要性を噛みしめることにもつながるのだが。全米で激論を生じさせた問題作ということが納得の読後感だ。読もうとするなら、十分な覚悟を持つべきだろう。
2016/07/23
あっちゃん
翻訳ものなのに、文章自体は読みやすい!かといって、内容が読みやすいかと言えば、それは違う(笑)普段私が好んで読む血みどろな話とは違い、陰謀的な辺りがモヤモヤをずっと引きずり、さっさと読み終えなくてはスッキリしない!という事での、ページをめくる手が止まらないというタイプ!で、読み終えてスッキリしたかというと、それも微妙(  ̄▽ ̄)
2016/10/09
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