くじ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
くじ (ハヤカワ・ミステリ文庫) / 感想・レビュー
ケイ
22の短編で400頁。ゾッとすると言うより、飲み込みきれないイヤなものを喉元に残す。22もあるので、徐々に毒にも慣れてきてなんとなく読み進む短編もあるなと油断していたら、最後の「くじ」で頭を突然殴られ、ぐわ〜んとなった感じ。辛辣とか毒とか悪意とか、そんなものではない。二編目のタイトルに「魔性の恋人」とあるが、確かに悪魔が潜んでいるかもしれない。訳が深町眞里子さんで良かった。解説で教えてくれていることに、思わず手で口をおさえた。それを頭に入れておいて、もう一度読まなくちゃ。
2017/03/21
☆よいこ
短編集。表題作のみ読了▽収録作品22>酔い痴れて/魔性の恋人/おふくろの味/決闘裁判/ヴィレッジの住人/魔女/背教者/どうぞお先に、アルフォンズ殿/チャールズ/麻服の午後/ドロシーと祖母と水平たち/対話/伝統あるりっぱな事務所/人形と腹話術師/曖昧の七つの型/アイルランドにきて踊れ/もちろん/塩の柱/大きな靴の男たち/歯/ジミーからの手紙/くじ▽「くじ(The Lottery)」6月27日に全住人が集まってくじを引く。1年に一度くじを引くのは昔からの慣例で止められない日常。当たりを引くと▽短編だけに狂気み
2024/01/11
かぷち
一見何事も起こらない短編集。何気ない日常、何気ない会話に潜む黒い感情。その毒、遅効性。序盤の一話一話ではそこまでの効き目は現れない、けれど徐々に本当に少しずつ全身が痺れてくる。気づいたときにはシャーリイジャクスンの仕掛けた罠にどっぷりと嵌っている。この罠が厄介なのは、真意を掴みづらいところ。作者が本当は何を考えているのか明記されていないので、読者それぞれで答えを導き出す必要がある。どれも一読しただけでは難解で味が分かりにくい、そこが癖になる。本を置いて罠から抜け出した時何かが変わっている。そんな作品。
2024/04/11
HANA
ある意味正統派の表題作から心の闇を覗き込まされるような作品、人間関係を描いた作品等、どれもこれも粒揃い。一番楽しみにしていた「くじ」であるが現在となっては類話が多く、ラストの衝撃に慣れてしまった感じがする。逆に「どうぞお先に、アルフォンズ殿」等は現在に通じる部分が多そう。先に読んだ奇妙な味の小説も同様の主題が多かったし。何気に気に入ったのは「伝統あるりっぱな事務所」や「麻服の午後」もやもやとするんだけど、やはりサキを思い出させられる。このもやもや感こそジャクスンで、後年の作品を彷彿とさせられるなあ。
2017/04/07
tonpie
短編「くじ」だけはアンソロジーで読んでいたが、作家の短篇集としては初読み。軽いタッチだが、この繊細さと同居している毒にシビレる。全体が5部に別れ、連作と呼びたくなるほど各作品が反響し合って、独特のムードを醸し出している。最初の「酔い痴れて」はあまりに尻切れトンボだが、「魔性の恋人」「おふくろの味」と読み進むと、奇妙な好奇心が起きて読むのをやめられなくなる。日常に潜むグロテスクな心理を、普通なら見過ごすような部分で切り取ってくる。訳者が解説で述べているように、さりげなく「悪魔」も登場しているらしい。↓
2024/05/16
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