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場所 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

場所 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

場所 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

作家
アニー・エルノー
Annie Ernaux
堀茂樹
出版社
早川書房
発売日
1993-04-15
ISBN
9784152035578
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場所 (ハヤカワ・ノヴェルズ) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

母の死に始まる『ある女』と対をなす作品。こちらは父の回想記である。基軸となる「私」が同じであるだけに重なる部分も多い。あるいは、エルノーが同じ問いを繰り返しているのだとも言える。「彼(父)の誇り、あるいはさらに、彼が自分の人生の意義とまで思っていたこと、それはたぶん、娘の私が、彼を見下した階層の社会に属しているということだろう」は、双方にとって(しかし、おそらくは娘にとってはより)悲痛なことであるだろう。本書の執筆の動機は全てこの言葉の中に籠められているといっても過言ではなさそうだ。

2022/10/25

まふ

主人公が労働者階級から「教養あるブルジョワたちの社会に入った時にその入り口の手前に置き去らねばならなかった遺産」として、父について「禁欲的」に「ドラマを行間に沈める」スタイルで綴った「テクスト」(作品)である。抑制された深い表現により作者の思いを鮮明に理解できる気がする。父が「最大の誇り、自分の人生の意義とまで思っていたことは、娘の私が彼を見下した階層の社会に属していることだろう」と、書くことにより、まさに「パッションとそれを冷静に記述する知性」が「醒めた激情の記録」を作り上げたのだと納得する。

2022/12/11

たま

30年以上前にフランス語で読んだ。教育を受けて「知識人」となった著者が、農業労働者として生まれ工場で働き刻苦勉励して小さな店を持つに至った両親をぎりぎりの率直さで書く。階層と教養の違いから生じる親子の断絶、その苦さが胸をうつ。フランス社会の一断面として素晴らしい本だと思った。今日、ノーベル文学賞受賞のニュースを聞き、(ウリツカヤ推しの私は)いい作家さんだけどちょっと小粒では?なんてことも思った。ただ、この30年のあいだに日本に紹介されていない作品があるらしい。受賞を契機に紹介されるのを期待しよう。

2022/10/07

ともっこ

仏ルノードー賞受賞の自伝小説。 ドラマ性を回避した禁欲的で淡々とした語り口になぜこんなに惹き付けられるのか。 『シンプルな情熱』と同様、決して美化することなく綴られる「"醒めた激情"の記録」。 生まれ育った下層社会からの脱却、ブルジョア社会に仲間入りし感じる父親との隔たり。 思うところが多く筆舌に尽くしがたい。 エルノーの魅力が伝わる堀茂樹氏の翻訳が素晴らしいとしか言いようがない。 訳者のあとがきも良くて、エルノーの作品になぜこんなに惹かれてしまうのか納得できた。

2021/11/20

父は、自分の貯金を若い夫婦が役立てればいいと望んだ。「私のほうは先も短いし、ちょっとあれば足りるんだ」。彼は私を育てて、自分自身が知らなかった贅沢を楽しめるようにした。だから、娘の贅沢に満足していた。不器用な父親の愛情がとても深くストレートに語られていました。

2023/04/05

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