妻の帝国 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
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妻の帝国 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション) / 感想・レビュー
里愛乍
一般的には秩序といわれているのかもしれない。民衆の都合とは言い得て妙。でも確かにそれは自分の意思ではないような。実際人間社会では特に村社会日本では個人意思よりこちらを重視する趣がありますし。本書に書かれている世界は、その現代の実態の、極端なものなのかもしれません。あと、あとがきにあったフェリーニの過ちについてはすごく共感した。私も経験があったので。ほんとお願いだから余計なこと言うもんじゃないって思いました。
2015/07/19
踊る猫
そりゃ結婚はメデタイことだけれどさあ……っていう心理状態で読んだせいか、非常に陰鬱な気分に。本書には二十世紀の悲劇が詰まっている、と言っても過言ではない(と思う)。理想に燃えた全体主義が先鋭化した挙句の果てにどのような末路を辿るかがこの上なく慎重にかつ丁寧に、淡々と描かれている。どす黒いブラック・ユーモアかそれとも悲惨なディストピア小説と受け取るか、評価は割れるだろう。荒唐無稽な設定を超絶技巧でねじ伏せるところは流石……無道大義に老教師が本を焼くように皮肉交じりに呟く中盤のところは、本読みとして唸らされる
2017/05/17
肉田肉美
「民衆感覚」なる怪しげな全体主義的感覚を介して「民衆による独裁国家」が誕生し、やがてそれ自体が孕む脆弱性により崩壊するまでの話。最高指導者は一般人である「わたし」の妻、その妻がひたすら手紙を書くだけで民衆が勝手に目覚め、国家が半ば自然に発生してしまう過程は不条理で滑稽だが、結果として出現する状況は残酷かつ不気味なまでにリアル。そうした状況は「民衆感覚」の阿呆らしさ、「わたし」と妻の所帯じみた生活と完全に地続きであり、その先には紛れもなく現代の日本社会があるという皮肉が恐ろしい。
2012/03/12
Ai
意識してしまうのは、やっぱりオーウェルの『一九八四年』。でも、その不条理さを強いる側と、強いられる側の両面で描いているのが興味深かった。平凡な夫が民衆主義によって、戸惑い、流され、狡猾にかつ偽善者になって、最後は諦観の境地に辿り着く。
2015/04/18
岡 幸治
後書きの影響された書に「1984年」と書かれていて、確かに本書とリンクを感じた。「民衆感覚」という各人が捉える直観(と私は解釈しました)によって、成り立つ世界。いつの間にやら原理主義に走ったりするもので、「妻の帝国」でありながら「妻」も制御しきれない。「民衆感覚」という言葉に囚われすぎて皆の幸せがどこかに消えていきました。確かにそれまでも幸せではなかったかもしれないけど。北朝鮮とか一つ間違ったらこんな感じの事が起きるかも?
2014/02/03
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