嫉妬
嫉妬 / 感想・レビュー
fwhd8325
ノーベル文学賞を受賞した作品なんて難しいという先入観はあるのですが、発表後過ぎに図書館へアクセスしたら、まだ、誰も借りていませんでした。ボリュームもないので、借りてみました。感想は激しい作品。小説ではなく、自伝的な作品という。この激しさの根底はどこにあるのだろう。女性ならではの感性なのかもしれない。表題作と「事件」の2篇が収録されていますが、どちらもテイストは同じ。翻訳もとっても表現が巧いと感じます。文学とはこういう作品を指しているのかもしれません。
2022/10/21
ザビ
「嫉妬」凄い小説だ…今年No.1かも。嫉妬により、制御不能な情欲の虜になった女性の心情を赤裸々に綴る日記小説。文章が恐ろしく知的&端的に整っているから、むき出しの情欲を作者と一緒になって深く観察している感覚すら覚える。「そんな考えの浮かぶ時、原初的な野蛮さが自分の中で立ち昇ってくるのを感じた」「当時真実だったただ一つのこと、あなたと寝たい、そして、あなたにもう一人の女性を忘れさせたい」…「嫉妬」は自らの性を、「事件」は非合法の中絶体験を直球描写。理知的に書くことで社会通念に抗おうとする相当な信念を感じた。
2022/11/13
フランソワーズ
”書く”という行為を通して、自らを客観視する。当然、「怒りや苦悩の情緒的表現におちいらないように」(p161)書いている。それによって、真実に近づけると作家は考える。その姿勢は両作共通であり、冷徹に記述していて、ある種観念的ですらある(特に『嫉妬』はあらゆる角度から、それこそえぐるようにして、内面を、また嫉妬という行為そのものを暴こうとする)。でもその分、時折顔を覗かせる感情の表現がすごく印象的であったりする。→
2022/11/12
viola
現代フランス文学界で注目を集めている小説家・・・らしいのですが、実際読んでみるとイギリスっぽいですね~!マキューアンを読みやすくしたような感じでした。年若い恋人と別れてからの嫉妬を描いた『嫉妬』と、当時違法であった妊娠中絶を描いた『事件』を収録。後者は(上手くて)吐き気が何度も襲ってきて、何度か中断しないと読めませんでした。「嫉妬」という感情が好きなので読んでみたけれど、もうちょっと狂気じみた方が好みかなぁ。
2011/03/05
大竹 粋
淡々とした語りでありがちな押し付けがましさはなく、ねっとりとした情念も醸し出されないのにも関わらず、その先に行きたくなるドライブ感のある文体。この今年のノーベル文学賞受賞者はやはり文体の人らしく、まだまだ活字の可能性を感じさせてくれる。素晴らしい。女(の心と体)をしっかり理解するためにはこの本は課題図書にすべきだ。
2022/12/23
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