ララバイ (ハヤカワ・ノヴェルズ)
ララバイ (ハヤカワ・ノヴェルズ) / 感想・レビュー
harass
ファイト・クラブの著者の四作目で最後の邦訳。乳児の突然死の取材をする、自らの子を亡くした新聞記者は、取材でその原因を知る女性に出会う。突然死をもたらす「間引きの歌」という詩があるというのだ…… 皮肉に満ちたトリビアと現代社会風刺や独特のフレーズやビジョンなどは相変わらず。ただ、超常現象がでてくると安易やなあと感じるのだが…… ○ス・ノートか…… 面白くないとは言わない。後半が腰砕け。これ以降ホラー風なものばかり書いているそうだ。邦訳されなくなったのがわかる気がする。著者は映画化を目論んでいるらしい。
2016/10/14
コリエル
読むだけで人を殺せる間引きの歌を巡る物語だが、まあその辺はフレーバーというか。何のために人を殺すのか、支配力を持ちたがるのか。世代間抗争についての考察、万物の霊長を蝕む環境テロ的思想の檻など、パラニュークの思索がまとまりなく連なって織りなされる一冊。パスワードはpasswordだっていう文章の繰り返しで笑っちゃった。こういう皮肉な文章へのセンスこそパラニュークだなと。
2022/11/03
鷹図
導入部が抜群に面白かっただけに、「間引きの歌」を廃棄処分するため全米を横断する後半は、その楽しそうな粗筋からはやや肩透かしを食らう感もなくはないのだけど、グロテスクでシニカルなユーモアと、予想の斜め上を行く展開がぐいぐいと読ませる。途中から「家族の再生」みたいな方向にシフトするのは、銃社会やテロリズムの時代における「加害者家族」の姿を、アクロバティックに再編してみせたからだと思う。だとしたらこの胸糞悪すぎワロタな結末は、どこか断罪の色調を帯びてくるわけだけど、実際解説にそれを裏付けるような事が書かれている
2012/05/26
訃報
パラニュークは読後、必ず既成の価値観を破壊して、思考も感情もわけのわからない状態に陥らせる、当たり前の世界の認識を変えてしまい、一つとして確かなものがない、という感覚にさせるから、すごい作家だなと思う。それが良いか悪いかと言うと、普通に社会生活を営む上では悪い気がするけど。基本的に主人公はみんな破滅へ向かい、死と隣り合わせのライフスタイルに落ち着くからな。恐ろしい。
2020/12/16
バームクーヘン
殺されるべき人がいる。俺は彼らを殺したい。一体そうしない理由があるのか??人を殺す〈力〉を持った時、その力に支配されないでいる事は出来るのか?可能なことを実行しないで制御する事は出来るのか?そんな目線で読み進めると主人公の葛藤が理解出来る。登場人物たちの善悪の判断、それぞれの持つ殺しの考え方、正統性が上手く表現されている。パラニューク哲学的な要素が多くて面白い。
2015/09/30
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