どちらでもいい
どちらでもいい / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
アゴタ・クリストフによるショート・ショート。作者を母国から追い出した敵国の言語で書かれたものはシュールなのに日常的で、乾いた笑いと底が全く、見えない瞳を覗いているよう。普段、敢えて見ないようにしている不安や「日常だと思っていたことが徐々に非日常だと思っていたことに変わってしまう」予感が抉り出されていて読んでいて、「止めて!」と叫びたくなることもしばしば。
2017/07/10
metoo
25の短編集。物語もある、呟きもある、私的な回想もあり、掴めないのもある。最初の「斧」は一人語りの舞台のようで面白い。悪童日記に代表されるようなゾクゾクするような気配がある。「我が家」は祖国を出ざるを得なかった著者の望郷が詩われる。「わが妹リーヌ、わが兄ラノエ」わずか二頁の中で作り上げる世界観に、ただ感嘆する。「郵便受け」は、30年間、両親からの手紙を待ち続けた孤児院で育った男の話。綺麗事ではすまない人生の苦さが絶妙。「間違い電話」「ホームディナー」は著者のシニカルな笑いに思わずニヤリ。
2017/02/26
かりさ
25編の短編集。不穏な空気漂う最初の『斧』から面白くのめり込むように読みました。淡々と綴られる短い詩のような物語は、色のない寂しさと絶望に満ちているけれど不思議と後味の悪さは感じられません。漂う喪失感が色濃ければ濃いほど想像性が高まり魅せらました。そして物悲しく綴られる物語たちが自分の中に存在する孤独と寄り添いいつまでも何度でも文字をなぞってしまうのです。『悪童日記』の作者ということですが未読でして、訳者あとがきにあるこれらの短編が後の長編のモチーフになっているという共感が得られず非常に残念。読まねば。
2015/11/05
リッツ
時に軽薄に興奮する私でもこんな気分になることがある。望まなければ失望もなく、失ってしまったものが取り戻せないならあとは時間が迎えにくるのを待つだけ。何でもかんでも自分に引き寄せるべきではないが、もう住むことはないだろう町や部屋、亡き人をぼんやりと思い浮かべていた。平坦で渇いた気持ち、愚かな行為と突き放し、時に皮肉な笑いも交えた短編集。疲れているときには返って休息になる?
2018/05/28
KAZOO
この薄い本に25の短篇が収められています。物語というよりも、短い詩のような感じのものもあります。全般的に暗い感じもするのですが、じっくりと味わうと何か残る感じがします。エッセンスのみを残した感じがしますので逆にこれを膨らませて一つの小説ができるかもしれません。
2014/03/27
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