伊藤計劃記録
伊藤計劃記録 / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
伊藤計劃氏は小説という媒体を使って「人間を自分の中に存在する地獄へ叩き込む自我は本当に尊いのか/いるのか?」を問いかけた。映画評論は取り上げている映画を全て見ていないので伊藤計劃氏の視点と比べられなくて理解しづらい・・・。しかし、ギブソン小説を訳した黒丸氏へのリスペクトや映画『ファイトクラブ』、『指輪物語』、『ハンニバル』への視点は興味深かったです。それにしても『虐殺器官』で紹介されていた『プライベート・ライアン』って嘔吐確実映画だったんか・・・(笑)
2015/10/12
まじゅ
伊藤計劃はロジックを披露する為に小説を書いていたようだ。ただ楽しむ為の読書をしたい私には相容れない。彼にとっては知っていて当然らしい書物も知らないし、説明不用らしい論理も解らない。本書を読んでいる間、自分がとてつもなく頭が悪いと言われ続けている気がした。穿った見方をすれば 伊藤計劃は実存に拘った哲学書の代わりに、より多くの人が手に取るだろう小説で己をこの世に残したかったのではないかとさえ思う。映画の評論ブログは、若者の小賢しさが鼻につくものの素直で読みやすく、くだけていて面白い。
2015/10/20
里愛乍
既読の短編小説。そして未読の散文、インタビュー、映画評。小説とは違ってこれらは伊藤計劃氏の思考で言葉で、砕けたような語り口調やインタビューの受け答えは妙に生々しく感じてしまう。彼がギブスン好きなのは初めて知ったんですが、うん確かに黒丸さんの文体ほんとカッコいいですもんねぇ。積読になってる「ディファレンス・エンジン」すぐにでも読みたくなりました。エッセイの「人という物語」はかなり興味深く、これだけでも読んでよかったと思える一冊です。
2014/10/27
マウリツィウス
【伊藤計劃の記録集成】映画論の設置した記号論序説を緩和したアニメSFを辛辣批判した伊藤氏は『メタルギア』超時空位相により古典的文学像を破壊、総べられた空域とは破綻と破断、ジャンル境界=幻想を具体視したパースペクティヴは古代史論としての終末観を否定していく。前提は誤解=「SFはSF」稚拙意見を永遠回帰する文壇こそが愚であり真実の見えない器だと見切った彼の視点は国文学像が芥川以降歪めた視点を断罪していく。佐藤亜紀共鳴連鎖により既成世界文学削除方法が確立し文学越境はディック以来の変革と変容を遂げていく稀少記録。
2013/05/28
磁石
感情を極力抑えて理詰めで、この世の不条理さと私というもののあまりの小ささをえぐり出そうとする。その伊藤さんの切実さは、その何もなさの先に何があるのか、知りたいという欲求から来ていた。あっけらかんと楽観するでもなく悲観して怯えるわけでもなく、あくまでも、正気のままそいつと向き合いたいという真摯さで満ちていた。短編であっても映画批評であっても、紙面上に言葉だけで、こことは違う異世界を現出させられるのは、その精神の賜物だったのだと思う。改めて、惜しい人を亡くしてしまった。
2013/07/31
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